アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#56
2018.01

まちと芸術祭

4 札幌国際芸術祭2017の公式ガイドブックを片手に(第4日目)

「芸術祭ってなんだ?」と大友に問われたら迷わず、「展示を見逃してもくやしく思わなくなることだ」と答えるつもりだ。これまで(第1回第2回第3回)を読んできてくれた読者なら、わかってくれるだろうと思う。「これも見たいが、もう間に合わない」とか「それも見たかったが、もう終わっている」とか「もう一度見たいが、そしたら今度はあれを見逃してしまう」とか、時計をにらみながら、ガイドブックをめくってきた。何度もページをめくることで、究極的に、「ま、いいか!」の境地にたどり着くことができた。精神的にすごく鍛えられた。

「長征-すべての山に登れ」の他にも、モエレ沼公園エリアには、展示作品があった。ガラスのピラミッド内では、大友良英+青山泰和+伊藤隆之の「wihtout records」の新バージョン、松井紫朗のバルーン作品「climbing time/falling time」、ナムジュン・パイクの「K-567」、伊藤隆介「メカニカル・モンスターズ」などがあった。どれも面白そうなのだが、すっかり、全部、見逃してしまった。だが、悔しくない。
同伴の写真家高橋宗正も見ていないのであるが、彼が奇跡的にシャッターを押した2枚がこれである。

モエレ沼公園のガラスのピラミッド内の展示。大友らの作品(右)と松井作品の一部が見える

モエレ沼公園のガラスのピラミッド内の展示。大友らの作品(右)と松井作品の一部が見える

上から見下ろしたところ。写真家の本能をもってしてもこの2枚のみであった

上から見下ろしたところ。写真家の本能をもってしてもこの2枚のみであった

「やっぱり面白そうだな」と思うが、全然見逃したことが悔しくない。心が完全に鋼のように鍛えられているからである。
伊藤隆介「メカニカル・モンスターズ」については、作者自身から、このようなメッセージをもらっている。前回の原稿の確認をしてもらった際にいただいたメールであるが、福永がガラスのピラミッドの展示を見逃したことについて、作品の解説を書いてくれている。

ガラスのピラミッドは、ちょっと残念でしたね。
こちらも2点ほど作品を展示したんですが、「メカニカル・モンスターズ」という作品は、ちょっと福永さんはお好きだったかもしれません。
昔からよくある縁起物の狸の剥製(信楽焼きみたいに、大福帳とか瓢箪を持っている)が、ルンバの上に乗って(つまりゲッター3みたいな感じで)、ナム・ジュン・パイクのロボット「K-567」の周りを、常に数匹徘徊するという作品です。
…と、自分で説明していて何を書いているのかわからない、というか常軌を逸している感じがして不安なので、概要書を添付します。
これはいつか、関西でも発表できればいいですが…。

上記の資料提供:伊藤隆介氏 courtesy of Kodama Gallery

上記の資料提供:伊藤隆介氏 courtesy of Kodama Gallery