アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#55
2017.12

まちと芸術祭

3 札幌国際芸術祭2017の公式ガイドブックを片手に(第3日目)

今日、2017年8月29日、火曜日、午後6時発の新千歳空港発伊丹行きの便に乗る必要があるとして。その便で京都に戻ることになっているとして、札幌国際芸術祭2017の出し物でまだ見ていない場所がたくさんある。
今が午前10時ならば残り8時間しかないわけで、しかも空港にはそれよりも早く到着していなければならず、できるだけ迅速に、駆け足で見なければと固く決意する。まず北海道大学へ向かう。北海道大学総合博物館1階企画展示室で開催されている「吉増剛造 火ノ刺繍−『石狩シーツ』の先へ」を見るためである。
北海道大学総合博物館は昨年7月にリニューアルされた。「開かれた博物館」を目指しているそうだが、それは本当にそう感じた。大学敷地内にあり、えらく広いゆえ、たどり着くのが一苦労ではあるものの、入場無料、展示も豊富、ソフトクリームやトマトジュースの美味しいカフェもあり、家族連れや老夫婦なども気軽に入れる雰囲気である。
3階では、常設展示室新設特別企画として「惑星地球の時空間」展が開催されていたが、地球が「地球」になっていく壮大なプロセスが、数々の物証と共に整理されている。宝飾品店にバイト経験のある者が関わったのではと思わせる洒落た展示である。

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しかも、ここにあるのは、宝石などよりもディープなものである。昨日、札幌宮の森美術館の石川直樹とアヨロラボラトリーの展示で見た4万年前の火山によってできた炭化木よりもさらに昔、「人間」など存在しない時間の痕跡をここで見ているわけだ。
人間なしで地球はすでに始まっていた。「全球凍結(スターチアン氷河時代)」とか「エディアカラ生物群が出現」などと年表に書かれているのを読むだけで、いずれ人間が消えてなくなってもなお、地球はこの宇宙に浮かび続ける強烈な意志を感じる。
「この展示をご覧になる前と後とで、地球に対する見方がガラッと変わるような展示をめざしています」と、この展覧会のチラシにあるが、それはやや言い過ぎにしても、若い研究者達が「展覧会」という手法に大志を抱いているのは十分に伝わってくる(会場で解説や質問にも気軽に答えてくれるのも良かった)。

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