3)しばられず、程よい距離で
オフィスキャンプがクリエイティブな活動が展開される場とすれば、ルチャ・リブロは本を通してものを考え、語り合う知的な場といえるだろう。
「オフィスキャンプはA面、僕らはB面」と真兵さんは笑う。オフィスキャンプとは、手法は違っても同じ方向性にある。だからこそ、あえてイベントなどを共催しなくてもいいと考えているのだ。
オフィスキャンプを運営する坂本大祐さんも「誰もが同じレイヤーに属すのではなく、違うレイヤー同士が微妙に重なって動くことが大事」と考えている。デザインを通した展開と、本を通して何かを考えていく活動。それぞれが互いをリスペクトしながら、程よい距離を保ちつつ活動を進めているのだ。
そういえば東吉野村での取材中、「今、ここでできることがあるから、この村にいる」という声を、何度も聞いた。
———菅野くんや青木くんが「面白いから住んでる」って言いますけれど、僕もそうありたいと思いますね。ここでできることがあるからいる、出て行きたくなったら出ていいんだよ、と自分にも言い聞かせているんです。出て行くつもりはないけど、一生いるっていうスタンスでもないので。(写真家、西岡潔さん)
東吉野村の新住民たちは、等身大のリアルを大切にするひとが多い。自分のスタンスを築きつつ周囲と手をたずさえる、青木さんのことばを借りれば「自分の取扱説明書をつくり、社会とすり合わせながら」無理のないバランスをとっている。それは、オフィスキャンプやルチャ・リブロ、それにいろり会といった「場」の存在が大きいのではないだろうか。
思いや考えを語り合える「場」があるから、多層的なレイヤーが作用する。それが東吉野村の可能性を広げている気がするのだ。