『アネモメトリ』では、2012年12月の創刊にあたって、東北の本の文化を取り上げた。もともと、本や雑誌の文化に厚みがある土地において、本を通してつながり、広がっていくひととまちのありようを、仙台と盛岡で取材したのである。
そのときは、さまざまなひとがゆるやかに手をたずさえて、本を介して東北を発信しようとするうねりのようなエネルギーに圧倒されるばかりだった。それぞれの土地で暮らす人々にとっても、まだ遠く向こう側にある日常を取り戻す手だてとして、本や本のイベントなどは広く受け入れられやすかったのだと思う。
今年で震災から5年が経った。数字的にはひとつの区切りなのだろうが、東北の方々にとっては、さまざまに未だ現在進行形である。むしろ、非日常が終わり、日常が戻ってきたように見えるからこそ、震災前のこと、起こってからのことをいかに受けとめ、残し、伝えていくかに向き合っているのではないだろうか。
じっさい、本とその周辺に限ってみても、東北の各地で人々に変化が生まれてきている。震災後、わずか数ヵ月でイベントを行う決断をして、仙台のまちとひとを勇気づけてきたBook! Book! Sendaiがこれまでと異なる展開を模索しているし、被害の大きかった沿岸部などでは、小さな動きがいくつも立ち上がりつつある。
東北各地で、本はどのようにとらえられ、どんなつながりをもたらしているのだろうか。仙台及び石巻を中心に、今起こっていることを見ていきたい。
- 1)「Book! Book!Sendai」その後 ワークショップ「小さな出版がっこう」 / 仙台「book cafe 火星の庭」店主 前野久美子さん1
2)「Book! Book!Sendai」その後 情報紙『Diary』 / 仙台「book cafe 火星の庭」店主 前野久美子さん2
3)原点に戻って、まちと本の出会いに目を向ける / 仙台「book cafe 火星の庭」店主 前野久美子さん3
4)ひとりひとりの大きさ、個人の余韻 / 仙台「book cafe 火星の庭」店主 前野久美子さん4
5)静かに、熱く。日常的な本の拠点をつくる / 石巻「まちの本棚」勝邦義さん1
6)まちの本屋の、新しいありかたを / 石巻「まちの本棚」勝邦義さん2
7)小さな経済で維持して、まちとひとに還元する / 石巻「まちの本棚」勝邦義さん3
8)長く続けるために、自発的に/ 一般社団法人Granny Rideto 桃生和成さん1 - 9)本をつくって伝える、ひとを育てる / 一般社団法人Granny Rideto 桃生和成さん2
- 10) 隔てをなくして、同じ円のなかに存在する / 一般社団法人Granny Rideto 桃生和成さん 3
- 11)まちとひとを、誠実に結ぶ未来