アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#153
2026.02

41年目の東川町 文化のまちづくりを俯瞰する

3 誰もが来られる、使いつづけられる場所「せんとぴゅあ」
2)地域コミュニティの持続を支える 「東川小学校」 2

ただ、現代的なコミュニティの拠点を小学校に加えるといっても、ただ施設を建てるだけでは絵に描いた餅になりかねない。小篠さんが、最初に大切にしたのが、「建物というハードよりも、運営組織というソフトを立ち上げること」だったという。

———「東川町学社連携推進協議会」という運営組織を立ち上げたんです。個別に活動していた人たちを束ねて、みんなで一緒にやっていこう、と。新しくできる施設でこんなプログラムをやっていこうよ、と企画を立てていきました。そうやって地域住民と議論しながら、地域交流センターの機能を決めていったんです。

協議会のメンバーは、町職員や教育委員、学校関係者だけでなく、農協、商工会、観光協会、NPO関係者など幅広く集められた。地域交流センターの核は、共働きの保護者向けの学童保育となったが、この協議会があることで、単なる学童保育施設という機能を超えて、地域交流センターを拠点に、地域ならではの体験学習プログラムが生み出された。

その一つが、農業体験と食育を結びつけたプログラムだ。

米作農業は、東川町の開拓以来の基幹産業であり、大雪山の麓の田園風景という人の営みが生み出した文化的景観を守る大切な生業でもある。もともと地域で体験農業の取り組みも続けられてきた。こうした背景を生かして、センターの建設とともにより広い体験水田・農園も一体整備し、学校と地域が連携する新たな食育のプログラムにつなげていった。

———プログラムを引っ張っていってくれたのが、JA東川の青年部の人たちです。自分は家業を継いだけど、子どもが継ぐかはわからない。農業を次世代に残すために、その面白さを伝えるフィールドがほしかった、と。

プログラムでは、実際に使われる農機に触れたりしながら、田植えや種まきから収穫までのプロセスを小学校に通う子どもたちが体験できる。収穫した米は、町内の小中学校の給食として使われる。

———地域の産業を通して、体験から楽しさ、興味、学びを引き出し、子どもたちに伝えていく。東川小学校・地域交流センターでそんな活動が生まれたことが、「せんとぴゅあ」のベースにあるんです。

地域の基幹産業を守るために、何ができるのか——学校と地域交流センターが連携しながらその切実な問いに向き合っている。この取り組みは、2016年に農林水産省の「豊かなむらづくり全国表彰事業」で、農林水産大臣賞も受賞。現在に至るまで、継続的に続いている。

こうした、地域コミュニティを支える公共施設のあり方が、「せんとぴゅあ」にも引き継がれていく。

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東川小学校の校舎とつながる地域交流センター。主には1〜3年生を対象とした学童保育として利用され、子どもたちは敷地内全体を使ってさまざまな体験をしながら過ごす