今回から、大正から昭和にかけて建てられた古い建物とその活用について、いくつかの事例をもとに考えてみたい。たとえ価値を持つものであっても建物は、相続問題や老朽化など、さまざまな理由で解体を余儀なくされることがしばしばある。なかでも洋館は活用のためのハードルが高いケースが多い。規模や設備面から住宅として使いつづけにくい、あるいは法律面で別の用途に転用しにくいなど、愛着だけでは片付かない問題があるからだ。
そんな逆境の中、市井の熱意ある人々が立ち上がり、行政や大資本に頼らずに、民間の有志が知恵やお金、労働力を出し合うことで洋館の存続に活路をひらく動きがある。今号の京都市左京区にある洋館「下鴨ロンド」を皮切りに神戸「五色山西洋館」、佐渡「若林邸」という3つの試みに焦点をあてて順次紹介していく。