人はどう育つのか。
これまで、アネモメトリ特集では、子どもも大人も育ち合う、各地の「場づくり」を取り上げてきた(#100、#101、#105、#106、#107)。
今回取り上げるのは、人が「育つ環境」に着目し、じっくりとプロジェクトを進めている人たちである。3回にわたって、その活動を具体的にレポートしていきたい。
取り上げる主体は、NPO法人SOMA(以下、SOMA)と代表の瀬戸昌宣(まさのり)さん。高知県土佐町で立ち上げ、現在は福岡県福津市で「一人一人の『わたし』が育つ環境をととのえる」ことを目指し、オルタナティブな学びの機会と環境を生みだしている。その立ち位置は「現代の杣人(そまびと)」だ。1本1本の木を守り、森林を生かしてきた先人のように、「一人一人の『わたし』に寄り添い、その育ちを邪魔することなく、社会を見て、未来を見て、必要十分な手をいれていく」存在。本質的な学びを手探りで実現しようとしている。
ここ最近、SOMAが全力で取り組んでいるのは「山結び」という活動である。拠点を置く福津市で、まちのシンボルでもある「宮地山」の生態系の再生を、子どもや大人とともに進めていこうという試みだ。
それはすぐに結果が出るようなものではない。山に入り、自分たちに可能な「手入れ」をするなかで、かかわる人が成長し、山の環境も保全されていく。その取り組みの過程(あいだ)は、おどろくほど豊かで、小さな発見に満ちあふれている。
キーワードの一つは「観察」である。まずは、目と耳を澄ませて、目の前のことに向き合うところから。「山結び」の前日、瀬戸さんの高校での授業に同行した。