前編では、長崎の雲仙小浜(以下小浜)に住むデザイナー、城谷耕生さんを取り上げた。城谷さんは、社会におけるひととものづくりのありかたを考えながら、地域に根ざした伝統や風土をとらえなおすなかで、“本当に必要な”ものや場を生み出し、またつくり直してきている。
今回は、城谷さんが拠点とする小浜に目を向け、この土地に愛着を感じ、移り住んだひとたちの話を中心にしていきたい。
小浜は、豊かな自然に恵まれた土地である。海があり、深い森がある。きれいな湧き水が豊富で、温泉の湯量も日本一。新鮮な魚介が手に入り、地の野菜にも恵まれている。坂道の景観もどこか懐かしく、日本の原風景のイメージに近いかもしれない。ただ、日本の他の地域と同じく過疎が進んでいて、刈水庵のあたりはほとんど限界集落でもある。
その土地が、ゆっくりと良い方向に動きはじめている。もちろん城谷さんがいることもあるけれど、それだけではない。スタジオシロタニの若いスタッフたち、東京から移り住んだ家族など、都市からやってきたひとたちがこの土地に愛着を抱きながら、地元のひとたちとかかわることで、土地のありようが変わってきたのだ。
その土地を輝かせるのは、住まうひとたちに他ならない。彼らはどのように生活し、どうふるまっているのだろうか。
- 1)仕事と生活のありかたに目ざめる / スタジオシロタニ・山﨑さんと古庄さん1
2)お金ではないつながりで、さまざまにデザインする / スタジオシロタニ・山﨑さんと古庄さん2 - 3)土地の知恵を生かし、アイデアを生む / スタジオシロタニ・山﨑さんと古庄さん3
- 4)住み続けるために、新しいしくみを見つける / スタジオシロタニ・山﨑さんと古庄さん4
- 5)「種」に導かれ、ライフスタイルを変える / 奥津爾さん1
6)冊子制作を通して、これまでを知り、これからを考える / 奥津爾さん2
7)じっくり、地道に「底力」をつけるということ
8)最後に、新しいしくみを試みるひとの話 / WARANAYA・霜川剛さん