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アネモメトリ -風の手帖-

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#299

一陽来復
― 森田都紀

一陽来復

(2018.12.23公開)

    このところ、朝、起床する時間になっても街灯が暗い街を照らしている。平成30年12月22日の昨日は、暦のうえで冬至だった。この日は一年のうちで昼がもっとも短く、夜がもっとも長い。また、古来より、かぼちゃや小豆粥を食べたり、ゆず湯に入ったりする風習があり、冬至は邪気を払い無病息災を祈る日でもある。
    季節の移ろいが豊かな日本では、一年を三ヶ月ごとに区切り、春夏秋冬の四季を定めている。冬至は、一年を二十四等分して時節の変化をさらに細かく捉える二十四節気の一つである。春には「立春」「雨水」「啓蟄」「春分」「清明」「穀雨」、夏には「立夏」「小満」「芒種」「夏至」「小暑」「大暑」、秋には「立秋」「処暑」「白露」「秋分」「甘露」「霜降」、冬には「立冬」「小雪」「大雪」「冬至」「小寒」「大寒」がある。それぞれの名称にはその時期の生命の躍動が込められていて、たとえば、啓蟄は冬籠りしていた虫が地中から這い出る頃、穀雨は百穀を潤す春雨が降る時期を意味している。自然を敬い、時節の変化とともに未来を案じてきた人々の心が映し出されているように思う。そこにあって冬至は、小雪と大雪に続く、まさに寒さが本格化する頃である。冬至を過ぎると、寒の入りを示す小寒、そして一年でもっとも寒い大寒が訪れる。
    こうした四季に対する人々の感性は、私たちの文化にさまざまな意味を見出してきた。たとえば、平安時代後期の大神基政という楽人は、平安時代に成立した雅楽という芸能に対して「おほよそ心得べきことは。時のこゑといふ事あり」(『龍鳴抄』)と述べていて、雅楽には理論上、四季と結びついた「時の声」という原則があるとしている。すなわち、「春は双調(そうぢょう)。夏は黄鐘調(おうしきちょう)。秋は平調(ひょうぢょう)。冬は盤渉調(ばんしきちょう)。」とし、四季に応じて音楽を奏するように説いている。さらに、鎌倉時代初頭になると、狛近真という楽人が雅楽の音楽は方位・五行・色彩とも結びついていることを指摘した(『教訓抄』)。双調は春・東・木・青、黄鐘調は夏・南・火・赤、平調は秋・西・金・白、盤渉調は冬・北・水・黒に対応するという。こうして現在の雅楽は四季に支配されるのみならず、そこにさまざまな意味が加えられて宇宙空間に位置づけられるに至っている。いうまでもなく、四季は私たちの生活を彩り、芸術を豊かに育み、そこに深みを与えてきたのである。
    今年の夏は例年になく暑く、地震や台風などによる災害も各地で起こった。冬至を過ぎ、これから日に日に昼が長くなるが、易では、冬至を境に極まっていた陰の気が去り、再び陽の気がやってくるとされる。一陽来復の春を待ちたい。