(2015.08.09公開)
ピア・ラーニングとは,文字通り(peer=仲間)と(learn=学ぶ)ことを指す.対話を通して学習者同士が互いの力を発揮し協力して学ぶ学習方法であり,人人とがお互いに力を出し協力して創造的な活動を行うことである.
ピア・ラーニングには主に2つの目的があげられる,
一つは,共に学び合い,課題を遂行することによって,それらのスキルを向上させるという狭い意味での学習と,もう一つは,仲間と共に学ぶことによって,人と人との社会的関係を築き,自分の考えを検討し,視野を広げ,さらには自分自身を発見していくという広い意味での学習である.
今,京都造形芸術大学通信教育部芸術教養学科では,インターネット上の学習において,まさにピア・ラーニングが生まれている.授業で,さらには学生たちの有志によって,仲間同士の対等で互恵的関係の中で互いに貢献しあって学んでいる.
まず,授業では,課題に対し,まず学生は,与えられた4つのテーマから1つを選び授業SNSで概要を発表する.発表後,グループ分けされ,各グループ内で,発表した概要に対するディスカッションを行う.一定期間のディスカッションを経て,最終的にレポートを各自が作成,提出するという流れだ.共に学ぶことによって,テーマ理解を深め,さらには,自分自身の考え方や価値観を再検討していく.教員の介入は最小限にとどめ,学習者同士が互いに尋ねー答えるという相互質問の活動を通して,自らの学習を意識的にふりかえり,自律的に学ぶことを目指している.
一方,学生たちの有志によってはじまった「レポート見せ合い(通称レポ見せ)」は,提出後のレポートを科目ごとにSNS上に提示して,意見交換を交わすという活動である.採点結果の良かったレポート,悪かったレポートを見ることで,互いに学び合う活動が自然発生的に起こり,アンケートによるふりかえりを行うなど,意欲的なメンバーが核となって周辺の学生を引き入れ,継続している.最初はその様子を遠目で眺めるだけだった学生が活動に参加し,やがては科目世話人になっていくという,正統的周辺参加がここに見られる.このレポ見せは,自己への内省を促し,自分自身の状況に再評価を与え,ふりかえって新たな意味を見出す機運となっていると考えられる.
学習というのは本来,他者から与えられるものではなく,学び手自身が行うものだろう.受け身の制度化された学びから,参加すること・体験することによって学びは深めていけるのだ.学習者自身が知識を構築していくプロセスであり,社会的相互作用を通じて行われるものなのである.
芸術教養学科は開講して3年を経て,やっと軌道にのったばかりだ.まだまだ不完全な点がある.私達教員は,学生たちの学習環境をより充実したものへとデザインし,学びを支援しなくてはならないと思う.
始まったばかりのピア・ラーニングの活動を促進・支援していきたいと,思いを新たにしている.