富山の駅弁といえば、「ますのすし」。「ますのすし」の名で知られる鱒寿司は、酢飯と寿司種に強く押しをして味をならして作る早ずしの一種です。
曲物の底に笹を敷き、塩漬け後に酢で味付けした鱒の切り身を並べ、酢飯を詰め、笹を折り曲げ蓋をした後、重石をします。最後に曲物の上下に青竹を当てて、ゴムで締めます。駅弁として有名な鱒寿司ですが、富山県内には専門店が約30軒あり、中元や歳暮の贈答に用いられるものも多いそうです。
鱒寿司の起源は、鵜坂神社(富山市)に神通川で獲れた一番鱒を塩漬けにして祭礼で供えていたことにあります。江戸時代になって現在の鱒寿司の形態になったといわれています。鱒寿司が駅弁として知られるようになったのは、明治45年、ますのすし本舗源(みなもと)が、「ますのすし」を富山駅で駅弁として売り出してからのことです。
ますのすし本舗源の「源ますのすしミュージアム」では、「源ますのすし」の技と伝統が紹介されています。このミュージアムでは、江戸から昭和にかけての珍しい弁当容器や旅の携帯品などを見ることができるほか、工場や職人によるますのすし作りの見学、ますのすし手作り体験ができます。私が参加した手作り体験では、職人さんが鱒寿司に関するクイズなどを交えながら教えてくれたので、楽しく美味しく作ることができました。最後に青竹をゴムで留めるのだけが大変でした(食べる時はゴムを外すのではなく、竹をスライドさせると簡単に開けられます)。鱒寿司は日持ちするので、作った鱒寿司は翌日のお弁当にして食べて、大満足。よい体験をしました。
今回、訪問した「源ますのすし」の包装は、白地に中川一政の鱒の絵です。鱒寿司のかけ紙は各店それぞれですし、使用される笹も大きく分けて2種類、味にはもちろん個性があります。笹については、緑鮮やかなものは冷凍された笹、少し白っぽいものは湯戻しされた干し笹です。鱒の厚みやしめ加減、脂の乗り、酢飯のすっぱい甘い、ごはんの粘り具合など、シンプルな寿司だけに味の違いもはっきりと出るのでしょう。富山に来られたらいろいろ食べ比べて、ぜひ自分好みの鱒寿司を見つけてください。
(加藤明子)
参照
ますのすし本舗源
http://www.minamoto.co.jp/