静岡県といえば、温泉を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。たとえば、近年復活を遂げた熱海温泉、伊豆半島には名だたる温泉地がずらりとならび、駿河には安倍川の源に梅ヶ島温泉、大井川SL終着駅の先には寸又峡温泉、遠州には浜名湖かんざんじ温泉、そしてこれらの間を埋めるように、海岸線に深山にあるいはビジネスホテルの中にまで、豊かなお湯をたたえた温泉が湯気を上げています。
観光地の温泉街を手ぬぐい片手にそぞろ歩く湯めぐりは、温泉好きの憧れです。されど思い立ってすぐに行ける地元の温泉というものも、なかなかどうして手頃でありがたいものです。掛川市には、海辺と山間部に公営の温泉施設があります。いずれもJR掛川駅から車で2、30分走るだけで、潮騒や森林浴まで楽しむことができます。
そのひとつ「ならここの湯」は、キャンプ場に隣接した小さな日帰り温泉です。町からさほど遠くないのですが山懐へすっぽり入ったような印象で、露天風呂に浸かれば四方の山から鳥のさえずりがこだまして、高い空に静岡空港へ向かう機体がキラッと光ったりする、静かでのどかな温泉です。ホームページにも「ホントの温泉の好きな貴方へ:内湯と露天風呂の他には、何にもありません」と堂々たる解説があります。
山を越えた先の、泉質の良さで知られる寸又峡温泉「美女づくりの湯」にも似た、癖のないさらっとした泉質の湯は、浴後の肌が滑らかになり短時間の入浴でも湯冷めしません。お食事処はいかにも地元の素朴なお店で、売店には近隣農家の野菜やおかずが並び、同じく近くの牧場のジャージー牛乳が売られています。日本各地どこにでもありそうな雰囲気の日帰り温泉ですが、それが気楽でほのぼのします。
「清い川の流れは1つの文化であり、森林キャンプの素晴らしさを味わう体験が極めて大切/ここでしか体験できないもの、ここでしか味わえないものを/故郷に里帰りしたような「ほっ」とするような気持ちになって」楽しんでほしい、そんな願いから「ならここの里(湯)」という名前をつけたそうです。
気軽に寄れる温泉があることで、季節の移ろいをまさに肌で感じる機会が増えました。そろそろ山の緑が鮮やかになる頃です。またご近所温泉へ行きたくなってきました。
(住田祥子)
「ならここの湯」
https://narakoko.info/71643/
静岡県掛川市居尻179番地 ならここの里
「大東温泉シートピア」
https://seatopia.info/
静岡県掛川市国安2808-2
「美女づくりの湯」
http://sumatakyo-spa.com/spa/index.html
静岡県榛原郡川根本町千頭368-3 寸又峡温泉
※いずれの施設も、新型コロナウイルス対策の影響に伴い、休館している場合がございます(2020年3月末現在)。