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アネモメトリ -風の手帖-

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#128

過去と現在が共存する場所 ザ・ライトハウス
― スコットランド グラスゴー

スコットランド最大の都市グラスゴー。この街の建物の多くは19世紀に建てられたヴィクトリア朝のものですが、街を歩いても古めかしい印象はなく、むしろどこか生き生きとした感覚を覚えます。また、古い建物の間に点在する現代的な建物も取ってつけたような印象はなく、まるで「そこにあるのが当然」というように存在しています。この、「古いもの」と「新しいもの」が共存する空間をぎゅっと凝縮させたような場所が、ザ・ライトハウスです。
ザ・ライトハウスは、1895年に印刷会社の倉庫としてチャールズ・レニー・マッキントッシュというグラスゴー出身の建築家によってデザインされた、ヘラルドビルの一部を改装して作られた多目的ビルです。入って右側の部分はヘラルドビルをそのまま活用しており、タイル張りの壁や煙突、このビルのシンボルである貯水塔も当時のままの姿を残しています。また、建物右側部分はイベントスペースとなっており、アール・ヌーヴォーの提唱者だったマッキントッシュのグラスゴー様式と呼ばれる建築・作品の常設展示のほか、スコットランドにおける建築学習の中心地・アーカイブとして機能しています。
一方、建物左側部分は全く異なる建築素材で旧建物部分に増設され、廊下や階段といったサポート的な空間として活用されています。左側部分の最上階は展望スペースとなっており、グラスゴーの街並みはもちろん、旧建物部分の貯水塔も眺めることができます。貯水塔の先端部分と展望スペースはほぼ同じ高さにありますが、廊下等では繋がっておらず、外から見るとそれぞれは独立して見えます。しかし根本の部分では「1つの建物」として共存しているのです。
このように「古いもの」と「新しいもの」、一見すると反発し合いそうな両者がうまく共存しているのは、お互いの存在が必要であることを認識しているからだと思います。継続させる、というのは古いものをそのままにしておくことではありません。連続する時間のその先に私たちは立っているのだ、という過去への配慮を忘れず、同時に時代の変化に対応するために「新しいもの」を取り入れる。そしてそれぞれが融合して「今」を造っているという思想をザ・ライトハウスは体現し、まさに灯台のようにグラスゴーの街を牽引しているのだと思います。

(佐谷由希子)

旧建物部分のシンボル、貯水塔

旧建物部分のシンボル、貯水塔

タイル張りの壁はオリジナルのまま。手前の緑の壁は新設部分

タイル張りの壁はオリジナルのまま。手前の緑の壁は新設部分

建築について学べるスペース

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