愛媛県東温市にある滑川渓谷をご紹介します。
東温市は松山市の東に隣接し、恵まれた自然環境とその立地から、ベッドタウンとして人気があります。滑川渓谷は、松山市の中心部から車で1時間程度で行くことができます。
国道から渓谷入口の看板を目印に山道に入り、そこから渓谷まで約7kmの道のりを走ります。道幅が狭く、曲がりくねった上り坂が続きますが、道の両側に立ち並ぶ木のトンネルや、美しい田園風景を眺めることができます。道中、地域の人が手作りで建てた小屋があります。ここは、地域の野菜や果物を販売する無人の産直市で、料金は備え付けの貯金箱に入れるシステムです。
20分程で滑川渓谷の駐車場に到着します。
車を出ると、川のせせらぎが聞こえてきます。遊歩道の入り口には、「滑川清流ハウス」という観光案内所があり、滑川の湧水で淹れられたコーヒーが販売されています。
ここから、「奥の滝」を目指して遊歩道を歩きます。遊歩道の脇には、傾斜の緩やかな沢があります。季節や前日の天気によって、沢を流れる水の量は変わります。水が少ない日には、サンダルや裸足で沢を登ることができます。「ナメラ」と呼ばれる全長1kmにも及ぶ一枚岩の川床は美しく、その上を透明の水が穏やかな曲線を描きながら流れていきます。
川床の所々に深緑の丸い穴があります。甌穴(おうけつ)と呼ばれるこの穴は、岩の窪みや割れ目に小石が入り、その中で流水の渦にまかれた小石が、内側を少しずつ削ってできたものです。大小さまざまな甌穴があり、夏には、子どもたちが入って遊ぶことができます。
遊歩道や沢を登りながら歩き続け、30分程度で「奥の滝」に到着します。左右の巨大な岩は、その形状から「龍の腹」とも呼ばれています。数千年かけてつくられた自然の形状は美しく、人の手の届かない圧倒的な力や時間を肌で感じることができます。
滑川渓谷は、季節によって表情を変えます。これまで、季節を問わず何度も訪れていますが、おすすめの時期は、サンダルや裸足で沢を歩いたり、色づいた木々の美しさを楽むことできる初夏から初秋にかけてです。
これからの季節、自然の中でゆっくりと過ごしたい方に、おすすめのスポットです。
(牛島光太郎)