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アネモメトリ -風の手帖-

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#115

チンドンと桜
― 富山県富山市

桜の咲く頃、富山では全日本チンドンコンクールが開催されます。今年は第65回。戦後の復興が成った昭和30年にその第1回が開催され、今につながっています。会期は3日間で、1日目の前夜祭では桜満開の川べりを練り歩く「夜桜流し」、2日目は素人チンドンコンクールと全日本チンドンコンクールの予選が行われ、最終日に全国一が決定します。今年も多くのチームが参加し、演奏や口上の技術などの宣伝方法が競われました。
チンドン屋とは、奇抜な服装や仮装で太鼓、鉦(かね)、クラリネットや三味線などを鳴らしながら広告宣伝することを生業としている人たちです。今はなかなか目にすることがなくなりましたが、昔、商店街に行くと軽やかな音楽とにぎやかな鉦の音が聞こえ、派手な着物を着た人たちがなにやら面白そうに喋っていたのを覚えています。あれがチンドン屋さんだったのですね。
チンドン屋は広告宣伝が仕事。コンクールではステージ上で協賛企業のPRが競われます。持ち時間は330秒。3人1組のチンドンチームが様々な方法で宣伝を行います。寸劇あり、ものまねあり、会場には笑いが巻き起こります。高らかに口上を述べる技術には、さすが、と思わせられました。今年の決勝戦テーマは「富山湾」。企業PRではないテーマ、しかも富山の人に向かって富山の宣伝をするわけで、会場全体の厳しい目の中、小気味好く繰り広げられるプロの技にみんな感嘆していました。
本戦が終了したら最後はチンドン大パレードです。市の中心通りに出場チンドンチームが勢ぞろい。にぎやかに演奏しながら練り歩き、今年もコンクールが締めくくられました。
富山市の桜はチンドンの響きとともに満開を迎えます。夜桜流しが行われた松川べりは、約460本のソメイヨシノが植えられており、桜の名所としても知られているところです。遊覧船に乗ってチンドンのうきうきした気分と一緒に桜のアーチをくぐるのは、富山ならではの花見の仕方かもしれません。

(加藤明子)

チンドンコンクールの締めくくり、大パレードの様子

チンドンコンクールの締めくくり、大パレードの様子

パレードでもしっかり広告宣伝しています

パレードでもしっかり広告宣伝しています

松川の夜桜。川面に映り込む桜がとても綺麗です

松川の夜桜。川面に映り込む桜がとても綺麗です