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アネモメトリ -風の手帖-

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#76

友情巻き
― 宮崎県宮崎市

日本発祥の地としていくつもの伝説がある宮崎県がレタス巻き発祥の地でもあることはご存知でしょうか。宮崎駅前の大通りからすこし小道に入ったところにある一平寿司の初代大将が友人である作曲家の平尾昌晃さんのために考案されたものです。野菜嫌いの平尾さんにどうにかして野菜を食べさせようと考え、酢飯、レタス、エビとレモン風味のマヨネーズという異色の組み合わせを思いつきます。当時、誰も見たことのないこの巻き寿司は、平尾さんの野菜嫌いを克服するだけでなく、バブルの波に乗るかのごとくあっという間に日本全国に広まり、今では海苔巻きの定番になっています。
一平寿司に入るとまず目に入ってくるのはすらりと伸びたカウンター席。すぐに「いらっしゃ~い」という声で出迎えてくれます。奥に進むと、店内は想像していたより広く、テーブル席やお座敷がいくつもあり、家族連れのお客でにぎわっています。多くは常連客なのでしょうか「レタス巻き~!」という注文の声があちこちから聞こえてきます。どうやら「かに汁」とのセットは欠かせないようです。濃紺の丸い器に並べられて運ばれてきた噂のレタス巻き。想像していたよりも細く、切り口が斜めになっていないのには驚きました。早速いただいてみると、しっかりとした歯ごたえのあるつやつやの海苔と酢飯の香り、ぷりぷりエビは大きくて食べごたえがあります。そして最後に口の中に広がるレモン風味のマヨネーズが優しくとてもクリーミーです。納得、この取り合わせはレタス(野菜)を食べているという感覚が見事にごまかせます。大将、お見事です。
でもカウンターの横には大将と平尾さんの写真が飾られています。昭和41年に誕生したこのレタス巻き。2人は亡くなってしまいましたが、50年以上も愛され続けていることを2人はどんな気持ちで見届けているでしょうか。これからも、この友情のレタス巻きは日本中で愛され続けることでしょう。

(出口聡子)

カウンターに立つ2代目大将

カウンターに立つ2代目大将

友情のレタス巻き

友情のレタス巻き

故平尾昌晃さんと初代大将

故平尾昌晃さん(左)と初代大将(右)