富山県の県花はチューリップです。県内のチューリップ生産の中心は砺波(となみ)市。県内のみならず、砺波のチューリップ球根生産は全国1位を占めています。砺波のチューリップの歴史、栽培技術と研究をほんの少しですが紹介します。
日本にチューリップの球根が渡来したのは幕末でした。明治末、本格的にチューリップの輸入が始まります。気候のせいか、関東での栽培はうまくいかず、大正に入って新潟で初めてチューリップ球根の商業用栽培が成功しました。同じ頃、砺波に住む青年・水野豊造氏がチューリップと出会い、砺波でもチューリップ栽培が始まりました。太平洋戦争中も砺波では軒下でこっそり栽培が続けられ、戦後に生産を再開、商用栽培が本格化しました。1952年に水野氏は日本初のチューリップ新品種を発表、チューリップは砺波を象徴する存在となりました。
砺波ではチューリップを1年中見ることができます。それは、促成栽培、露地栽培、抑制栽培という3種類の栽培方法を駆使しているからだそうです。露地栽培は自然栽培と言い換えてもいいでしょう。促成栽培と抑制栽培では、プランターごと冷蔵庫に入れるなど徹底した温度管理のもとで花の時期が調整されます。季節以外に花を咲かせることができるのは、たゆみない研究の成果なのです。
品種改良における研究も盛んです。おなじみの黄色いチューリップ「黄小町(きこまち)」は、1982年に砺波で生まれた新品種です。黄小町が生まれるまで17年かかったそうです。一般的に、品種の異なるオシベとメシベを交配させてできた種が球根になるまで約5年、その球根からできた新品種の球根が生産できるようになるまでさらに10年以上かかります。黄小町のほかにもたくさんの新品種が砺波で生まれました。丹精込めて作られるチューリップは砺波に住む人々にとってどんなにか誇りでしょう。毎年春に開かれる砺波チューリップフェアには、700品種300万本のチューリップが咲き誇ります。ぜひ、満開のチューリップを見に来てくださいませ。
(加藤明子)