「暑いねー」「暑すぎる」
日本中にこんな言葉が飛び交う8月。みなさん、夏と言えば何を思い浮かべますか。ギラギラの太陽、花火、海水浴、蚊取り線香、ひまわり、朝顔、かき氷、バーベキュー。四季のある日本では「風物詩」と呼ばれるものがあります。その季節になると目にするようになるもの、その言葉を聞くと季節を想像できるものなど様々です。
そして、ここ大分県にはお盆の風物詩「篭盛(かごもり)」があります。篭盛とは、初盆を迎える家庭に近親者から届けられるお供えものです。お中元のシーズンになると、大分県内のデパートにはお中元のコーナーと横並びに、提灯、お線香、そして篭盛が陳列されます。乾燥海苔、缶詰め、お菓子などの周りを造花で取り囲んだ篭盛は、とにかく華やかです。
8月13日から15日にかけて、各家庭ではご先祖様を迎えるための準備を行います。まず、仏壇の両脇に提灯やほおずきが飾られます。これは、ご先祖様があの世からこの世の自宅に戻って来る際、迷わないよう、目印になるようにという意味があるようです。精霊馬と呼ばれるキュウリの馬やナスの牛は、足の速い馬に乗って早く戻って来られるように、歩みの遅い牛に乗ってゆっくりあの世へ戻っていくように、と願いの込められた飾りつけですが、これらは全国どこにでも見られるお盆の風物詩ではないでしょうか。
大分ではそれらの一般的な飾りつけに加え、篭盛が必須アイテムになります。高さ120cm程のこの置物は、親族や身近な人から送られてくるため、部屋中に並べられます。
篭盛は、県内の老舗お菓子屋と県内唯一のデパート「トキハ」が協力して売り出したのがはじまり。特に提灯やキュウリ、ナスのように意味がこめられているわけではないものの、「トキハで売っているから、お盆に篭盛は当たり前」と、老舗のお菓子屋とデパートの戦略は見事に成功し、ここ数十年、篭盛は大分の風物詩になっています。篭盛はこれからも大分のお盆を派手に、元気に盛り上げてくれることでしょう。
(出口聡子)