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アネモメトリ -風の手帖-

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#7

お寺の境内で現代アートの展覧会
― 長野県小布施町

「境内アート小布施×苗市」は、長野県上高井郡小布施町の古刹、玄照寺にて毎年4月に開催される、現代アート作品の展示やクラフト作品販売、パフォーマンスや交流会などを織り交ぜた催しです。特徴は、本堂内も含めた寺の境内空間そのものを、アートの展示やパフォーマンスの会場にしていることです。展示されるアート作品は、オーソドックスな絵画から実験的なインスタレーションまで多種多様。発表されるパフォーマンスも、チンドン屋さんからおしゃれなボサノヴァの弾き語り、演歌の熱唱までごちゃまぜに展開されるのが最大の魅力です。
このイベントに出展、参加していてとても気持ちがいいのは、骨董市やお寺での法要などを目当てに来ている「アート観覧目的ではない来場者」と、作品への参加を通じて触れ合えることです。アートをなんでもかんでも知ったふうに斜に構えていない方たちの、反応や意見が素敵です。興味なさげに通り過ぎようとするじいちゃんばあちゃんが、一緒に来た孫たちにつられて苦笑いしながら作品へ参加してしまうところなどがとても楽しく、本来アートはこういう誰もが自然に楽しめる部分も持っているのに、出展者として参加するとどうもかっちりしすぎてしまい、反省させられます。
この展覧会の元になっている「玄照寺の苗市」は、1959年から続いていて50年以上の歴史があります。苗市発足当時はにぎわっていたようですが、だんだん下火になり規模の縮小が続いてきたところに、アートの要素を取り入れたリニューアルが始まりました。2016年で13回目を迎えるまでに成長しています。
小布施は、栗や和菓子などでも有名な、先進的な観光戦略や文化・まちづくりの取り組みで注目されている町です。江戸時代後期に浮世絵師の葛飾北斎が長期に渡って滞在し、寺の天井画や祭屋台の天井絵などに肉筆画を残したことでも知られており、北斎の作品を常設展示する美術館もあります。今年は桜が早かったので散り際でしたが、例年は小布施で桜が満開の時期にこの展覧会は行われますので、ぜひお立ち寄り下さい。

(山貝征典)

「境内アート小布施×苗市」開催中の玄照時境内

「境内アート小布施×苗市」開催中の玄照時境内

お寺の回廊も展示空間に

お寺の回廊も展示空間に

筆者が出展した参加型作品《井Ⅳ》

筆者が出展した参加型作品《井Ⅳ》