市やマルシェを通して、これからの経済や流通のかたちを考える2回目です。
前号では、京都市上京区から北区にわたる地域・西陣で開催される「環の市」を紹介した。女性写真家が「市をやりたい」と思い立ち、まわりの知人友人に声をかけ、自宅で始めたサロンのような市である。ものとつくり手に敬意をもち、ものを介して気持ちのやりとりをするような、風通しのいい小さなコミュニティが生まれつつあった。
今号もまた、西陣の小さな市を取り上げる。個人経営の飲食店「串揚げ万年青」(以下、万年青)による、食のみを扱う「オモテ市」である。夫婦で店をやりながら、7年以上にわたって毎月欠かさず続けてきた、ちょっとした名物市だ。
同じ西陣の、それもすぐ近くにありながら、2つの市は成り立ちもありかたもずいぶん異なっている。それは、市の面白さや可能性の広がりが実感できることでもある。
市を開き続けることは、万年青のふたりにとって、どんな意味があるのだろうか。そして、どのような変化が生まれ、この先へとつながっていくのだろうか。さまざまな関係性をたどりながら、見ていきたい。