ここ5年で取り上げてきた各地の変化は、ものづくり、地域づくりの転換期において、これからを示唆するようなものでもあった。
生まれ育った新潟に根ざして、地場産業とともに「ほんとうにつくりたい / 届けたい / 使いたいもの」をつくるエフスタイル。彼女たちが積み上げてきたものづくりのシステムは、すこやかに循環している。
ファッションというジャンルにおいては、つくり手は都市を離れて、自分たちのペースで創作を続けるようになってきた。東京以外の場所に拠点をかまえ、発信するデザイナーもすでに何人かいる。スローでローカルなものづくりが静かに進行している。
地域に目を向けると、キーパーソンが中心となり、各地の動きを生み出していた。現状をしっかり見て、数年後のまちのありかたを思い描くところから、今必要なこと、やるべきことを考えて、行動に出る。誰かが一歩を踏み出すと、そこからものごとは動き始める。その動きに惹かれて、若い世代がやってくる。点と点はつながり、動きは面となり、目に見えるうねりが起こっていく。
これまで見てきた事例は、いずれも好循環のなかにある。大なり小なり問題は起きるのだけれど、その都度解決を試みることで、大きく滞ることのない流れが生み出されている。そうするなかで、本当に必要なものごとが残され、状況はよりシンプルに、持続可能なものになるのではないだろうか。
また、各地の好循環がつながっていく兆しもある。それぞれのありかたを認め合いながら、協力し合える部分があれば協同していく、というものだ。具体的にはまだこれからだが、その状況がもっとすすめば、都市と地域、地域と地域を自在に行き来して生活するようなライフスタイルがもっと一般的になるのかもしれない。
これまでの小さな動きがいかにつながるかで、これからはつくられていく。日本のものづくりと地域づくりの未来には、たぶんそれしかないし、それがある。
撮影
石川奈都子(1章1、2章4)、成田 舞(2章1)、森川涼一(1章2、2章2、2章3)
編集者、ライター。京都造形芸術大学教員。近刊に『標本の本-京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)や限定部数のアートブック『book ladder』。主な著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノニマ・スタジオ)など。