10) 固有の記録と、共感を生む表現と
震災のような大きなできことが起こった後に、ふつうのひとは、何を思い、どう行動し、どんなふうに暮らしたのか。心をどう癒したのか。その記録はこれまで、じゅうぶんに残されてきたとは言い難い。
仙台では今、そのことが着実に、ていねいに行われていると実感した。どのように残し、伝えていくかは、大きくふたつに分かれているように思う。固有の記録はより具体的に、理解されやすいように。共感を生む表現はより研ぎ澄まされ、普遍的に。その両方があってこそ、アーカイヴは機能する。多くのひとの言葉が重ねられるなかで、ものごとはそれぞれの”自分ごと”となり、風化することなく生き続けられる。少しずつかたちを変えながら。
はじめに紹介した荒浜だが、問題を抱えながらも、変化が始まっていた。
住宅を再建できない災害危険区域とされ、住み続けたい住民と行政がせめぎ合うなか、住民有志が「荒浜再生を願う会」をつくって活動している。また、住民だったひとたちの幾人かは、家は建てられなくても、自宅跡などで新しいことを始めているのだった。
荒浜の歴史や文化を残すための「海辺の図書館」。ピザを焼く石窯をもうけて集う場をつくり、かつての地区の写真を展示する「里海荒浜ロッジ」。それから、ヒップホップの流れるスケートパーク「CDP」もある。実家のあった場所で、オーナーの貴田慎二さんが仲間の手を借り、自分たちでつくりあげた。笑い声のあがるCDPは、荒浜の景色を確かに明るくしている。
こんな変化も、わすれン!に参加する作家たちが映像などで記録し、残している。また、わたしたちが訪れた日も見学に来ていたひとたちが何人もいた。できるだけ多くのひとが集い、語られるなかで、次につながる何かがきっと生まれる。続けることは尊いことだ。
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編集者、ライター。京都造形芸術大学教員。近刊に『標本の本-京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)や限定部数のアートブック『book ladder』。主な著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノニマ・スタジオ)など。
写真家。1994年、第3回写真新世紀優秀賞。国内外での写真展や写真集を通じて作品を発表。2013年東京都写真美術館でのグループ展「路上から世界を変えていく」に参加。2014にはMEM での個展「sounds and things」、PARIS PHOTO 2014 への出展など精力的に活動を行っている。主な写真集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『encounter』(マッチアンドカンパニー)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。