6)町議会議員として 接続回路を増やす
2025年、モリさんは湯梨浜町の町議会議員に立候補して当選した。選挙に出馬した際のキャッチコピーは「困ったら、助け合おう」。これまでの話もあわせて、モリさんが議員になったことは自然な流れのようにもみえる。土と社会の両輪で生きようとするなかで培われた、人と人、人と自然が有機的につながるための思考と行動の先に議員があった、といえるかもしれない。
まちの生態系を意識することもそうだし、「ホール・クライシス・カタログ」の会の活動も、すでに政治の領域にふれていたのではないだろうか。
———会をやってると、「制度」じゃないとどうしようもないことがたくさん出てくる。だけど、自分はその制度に対して、どうやって働きかけたらいいかわからなかったんです。
議員になって、制度をつくれるかどうかはわからないけど、議会に提案を持っていくことはできる。だから、接続回路を増やすためにやっているところがあります。人の困りごとを知った後に、どういう回路で政治や制度と結びつけることができるか。そのやり方を掴みたいし、どうすれば政治の側へ生活者の声を届けることができるのかを探っています。
具体的には、住民がまちのできごとに関心を持てる環境づくりを考えている。「どうでもいい」と思われないこと、とモリさんは言う。小さなまちで暮らしを営んでいると、一見自分に関係のないように思えることも、さまざまにつながっている。「どうでもない、関係ない」と言ってしまえば、つながりはしなやかさを失い、硬く閉じてしまう。
現在取り組んでいる活動のひとつに、松崎駅の駅舎活用に対する提案がある。1934(昭和9)年に建築された趣ある駅舎だが、今は無人駅となっている。ちなみに松崎駅からは、汽水空港をはじめ、映画館やカフェなどは徒歩圏内だが、汽車の接続が悪く、便利ではない。地元の人はほぼ車で移動するから、利用者は主に学生、それに老人や旅行者くらいだ。
———駅舎も「どうでもいい」と感じる人からすれば「どうでもいい」かもしれない。まちに暮らす人のほとんどは車でしか移動していないし。だけど、自分は「どうでもよくないんじゃない?」と思っています。
車を運転できない人、遠方からやってくる人も存在していますし、それにこの駅舎は毎日学生が200人ぐらいは使ってます。せっかく屋根のある建物が残っていて、駅の待合室も空いている。都会みたいにひっきりなしに電車が来るような状況にならなくても、学生が喜ぶような駅舎にしたり、遠方から来る人に向けてガイドマップを置いたり、色々なことができるはずです。可能性しかないと思うんです。
具体的な利用方法を提言する前に、まず「駅舎をどうしていくべきか、まちの人々といっしょに考える場所をつくってみる」ことが最も大事だとモリさんは考え、行動している。
———自分が暮らしているまちの風景や施設がどう変わっていくのがいいのか、それは人によって異なります。大事なのは、その決定プロセスに暮らしている人自身が関われるかどうかだと思うんです。一方的にまちの風景が変えられてしまうのではなくて、その人が願うことを言える場所があること、そしてその声に耳を傾けるという仕組みがあること。駅舎に対する個人的な願望は僕も持っていますが、なにより大事なのは、声と声が重なる場所をつくることだと思っています。プロセスを開いていくこと。



