アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#155
2026.04

シネマと本とパンと まちの「あいだ」を潤す

1 本屋「汽水空港」 鳥取県東伯郡湯梨浜町
1)汽水湖に面したDIYの書店

鳥取県のほぼ中央部、日本海に面する湯梨浜町。町の真ん中には大きな東郷池がある。東郷池は川で日本海とつながる汽水湖で、おおらかな景色が広がる。かつては湖と日本海を結ぶ水運によって栄え、湖から松崎駅にかけての地域には商店がひしめき、活気があったという。

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そのエリアに、ここ十数年でいくつか、個性的な店や空間ができている。そのひとつが、本屋の「汽水空港」だ。東郷池に面するすばらしい立地だが、古びた小さな建物は、一見しただけでは店かどうかもわからない。そもそも、本屋なのに「空港」というのも謎めいている。店主のモリテツヤさんがDIYでおもちゃ屋の倉庫を増改築した場所なのだった。

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店内に入ると、小屋型の棚をはじめ、手づくり感あふれる木の空間が広がっている。壁面や台には本がぎっしりと並び、高い天井を見上げればイベントのフライヤーなどがたくさん貼ってある。混沌としているのに、どこか風通しは良い。

ジャンルは幅広く、思想に哲学、文芸、実用などの新書と古書が入り交じり、絵本やZINEなども充実している。世界の多様さが立ち上がってくるような印象を受ける。そして、この店の最も大きな特徴は、店主モリさんの思いと人柄がにじみ出ているところだと思う。ポップなどの文言にも、ついつい引き込まれてしまう。

ちなみに、モリさんは移住者で、鳥取には縁もゆかりもない。なぜ、人口も少ないこのまちで本屋をやろうと思い立ったのだろうか。

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奥にはギャラリー「小屋」があり、カフェスペースもあって飲食もできる。個性的な独立系書店として、遠方から訪れる人も絶えない