アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

TOP >>  特集
このページをシェア Twitter facebook
#155
2026.04

シネマと本とパンと まちの「あいだ」を潤す

1 本屋「汽水空港」 鳥取県東伯郡湯梨浜町

「まちには映画館と本屋とパン屋が必要だ」。そう言ったのは、芸術家の松井利夫さんだ。2015年に取り上げているが(#36#37)、陶芸を主体にユニークな活動を続けている。京都市に隣接する亀岡市の田んぼのなかにアトリエをかまえ、亀岡の農業とアートをつなぎ、芸術祭を行うなど、まちにアートを通して働きかけてきた。その実感から出てきた言葉に、はっとさせられるものがあった。

映画館は芸術、本屋は知、パン屋は食文化を代表している。そのどれもがネットで事足りる時代だけれど、身近にある文化的な場所から得られる「何か」は、思いのほか大きいのではないだろうか。
映画館や本屋に行く時間や体験。知恵や技術を生かしたパン。それらがなくても、もちろん生きていけるし、何より経済的な充足があってこそ、目が向けられることかもしれない。

実際、各地で映画館や書店が次々と姿を消し、パン屋のような商売が続かない場合も少なくない。その一方で、個人や小規模な単位で、それらを立ち上げる動きもみられるようになってきた。商売としては成り立ちにくい面もあるが、その場所を開き続ける営みは、地域の文化的な土壌を育むことにもつながりうる。また、点在する店や空間は、人と人、場と場の「あいだ」を潤すようにもみえる。

映画館、本屋、パン屋があることで、まちにどんな変化が生まれるのか。訪れる人々の生活や関係性に何をもたらすのか。さまざまな地域をこの視点からみていきたい。

まずは、鳥取県湯梨浜町の小さなエリアから。強い個性をもつ本屋と小さな映画館、眺めの良いカフェを取材した。前編では本屋「汽水空港」を紹介したい。

01_day1-203-0148

02_day2-109-0378

03_day2-34-0240

04_day2-99-0361
モリテツヤ
1986年生まれ。北九州、ジャカルタ、千葉で育つ。2011年に鳥取へ着陸。2015年から本屋「汽水空港」の店主。2024年4 月から湯梨浜町議会議員。議員活動をしながら本屋をやり、農作業をして、文章を書くこともしている。共著に『生=創×稼×暮』『新版 日本のまちで屋台が踊る』など。