ファッションは環境問題や社会課題とどう向き合うべきなのか。それを考えるためにイギリス、ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションのサステイナブル・ファッション・センターを訪問し、研究者たちと対話してきた。連載の第1回では若手研究者のフランチェスコ・マザレラさんにロンドンの市民、難民と取り組むファッションプロジェクトについて話を聞いた。
第2回ではイギリスの教育の現場を見て、センターがどんな活動をしているか、何を目指しているのか、戦略担当のナオミ・ブリアールさんに伺った。今回はセンター創設時からのメンバーであるサンディ・ブラックさんに、持続可能なファッションをどのように追求してきたのか、ご自身の体験にもとづいて語っていただくことにしよう。
私が大学でファッションと環境について教えようとした2011年頃、この領域はまだ形成途中にあり、参考にできるものは海外の文献しかなかった。当時英米ではファストファッションの負の側面を告発するノンフィクションが出版されたり、課題解決のための解説書、研究書が出始めてきた時期である。私が手に取った本の1冊がサンディさんの著書『エコ・シック : ファッションの逆説』(2008)であった。この本は豊富な実例をあげて持続可能なファッションの取り組みを紹介し、世界で何がおこっているのか、どんな試みがおこなわれているのか、視覚的にわかりやすく解説されており、大きな学びを得たものである。その中には日本のHaaT(皆川魔鬼子)、NUNO(須藤玲子)、ミナペルホネン(皆川明)、などのブランドが紹介されているが、サンディさんはかつてニットデザイナーとして活動されて来日経験があり、日本のファッション界にも精通されていたのであった。
その後も著作を刊行され、去年(2024)はイギリスの状況を広い範囲から検証する『ファッション、衣服、テキスタイルの持続可能性をさらに進める 』を共同編集されており、この分野の第一人者といって過言ではないだろう。


サンディ・ブラックさんの著作の一部 / サンディさんのプロジェクトを紹介するパンフレット


