アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#126
2023.11

育つ環境をととのえる 人も、自然も

2 人と山を多様につなぐ「山結び」 NPO法人SOMAの取り組み2
1)人と山をつなげるということ

SOMAは一貫して、「人が育つ環境をととのえる」ことを試みてきた。そのなかで、人と自然をつなげる「山結び」に注力するようになった理由は何だろうか。あらためて聞いてみた。

——福津に住むようになって、山、川、海で遊ぶことがそれまで以上に日常になりました。毎日観察していると、山での倒木や進行していく海での磯焼けを目の当たりにして、自然が危機的な状況にあると感じました。生き物が育たなくなっているんです。微生物や昆虫から人へ、そして山へと、僕の興味はより広く移り変わってきました。自分が元々掲げていたミッションは「人が育つ環境をととのえる」ですが、僕は人も生き物だと思っているから「生き物が育つ環境をととのえる」ことなんだ、と。その気づきから、SOMAの活動を自然とのつながりのほうに拡げていけたんです。

瀬戸昌宣さん

瀬戸昌宣さん

宮地山は標高181メートル。なだらかなかたちの良い山で、山の前方には宮地嶽神社がある。神社から後ろを振り向くと、玄界灘まで参道が続く。山と海が一直線につながる眺めは壮観だ。しかし、神社の参拝者の数は全国有数でも、宮地山そのものに立ち入る人が減少し、地元でも登ったことのない人が少なからずいる。

———この山がよくなったら、ここに住んでいる人たちはもっと豊かになるのではないか。山を見上げたら幸せになるぐらいのパワーを持つんじゃないかなって。僕が生み出したいと思っていた価値みたいなものが、ここに没頭することで生み出せていけるように思ったんです。人とのかかわりも、多世代のかかわりも必ず出てくるし、受け渡すという作業も絶対出てくる。非常に長い時間軸でできると。

「山結び」の活動は、行政や企業等の助成は受けず、寄附だけで成り立っている2023年4月から、寄附してくれた人々と、環境改善の実践家や研究者たちが共同して月1回のペースで環境再生を続けている。
8月のこの日は、山結びのスペシャルツアー。生態学者である瀬戸さん、造園家の轟まことさん、林学博士の西野文貴さんとともに山に登る。
瀬戸さんの専門は昆虫や微生物。轟さんは次世代につなぐ「環境改善」を考えた庭造りを実践する。西野さんは樹木の専門家で、世界中で植生の調査と植樹のプロジェクトも行っている。
参加者は30人ほどで、世代は幅広く、子どもたちも多数。地元民もいれば、遠方から来られた方々もいる。1回目から欠かさず参加している人もいれば、初めての方もいて、まさに多様だ。
宮地嶽神社の本殿に参拝してから、山に入った。

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宮地山と玄界灘を結ぶ眺め / 宮地嶽神社の大注連縄は日本一の大きさ

宮地山と玄界灘を結ぶ眺め / 宮地嶽神社の大注連縄は日本一の大きさ