アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#122
2023.07

千年に点を打つ 土のデザイン

1 土という素材に潜る 高橋孝治と常滑

2012年以来、特集記事では、各地のものづくりや地域のプロジェクトを何度も取り上げてきた。その間、全体の状況もかなり変わってきたと実感している。
ビジョンをもって、根本的なしくみを変えようという大きな動きが起こる一方で、デザイナーやものの作り手など、技能ある人たちが個々のできることを持ち寄った、地道な活動も目に見えて増えてきた。「みんなで(地域を)よくする」というかまえではなく、点を打つような小さな動きが、各地で同時多発的に起こっている。

今回は3号にわたって、千年近く続くものづくりとその土壌を、どのように継承し、現代に生かしていくのか、愛知県常滑市(以下、常滑)で起こっていることを見ていきたい。常滑焼の産地であるまちに、少しずつ変化が起こっている。そこにかかわっているのが、デザイナーの高橋孝治さんだ。
高橋さんは1980年、大分県別府市生まれ。多摩美大を卒業後、(株)良品計画の生活雑貨部企画デザイン室にプロダクトデザイナーとして12年所属する。数々の生活雑貨を開発した後に、常滑に移住した。
高橋さんは、土という素材と常滑の風土に誠実に向き合ってきた。地域の作り手や伝え手たちに寄り添いながら、試行錯誤を続けている。効率を上げることとは真逆の、ある人の言葉を借りれば「泥くさい」デザイナーである。
高橋さんたちの腰を据えたものづくり、場づくりは、福祉という領域にも広がって、新しい風が吹きつつある。土に染みこむような地道な活動は、常滑窯業の長い歴史に、どんな点を打つことになるのだろうか。
第1回目はこの地の窯業のありかたを見ながら、高橋さんの仕事の軌跡を追っていきたい。

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高橋孝治さん

*本特集では「千年」あるいは「千年近く」という表現を使っているが、実際の歴史は900年に満たないという説もあるとのこと。その点、ご了承いただけましたら幸いです。