アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#160
2026.09

移住と仕事のいま2026
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3 「疎」の余白を生かす 地域のこれから 奈良県東吉野村
4)出発点は「自分」 その先に「社会」がある

坂本さんは、まず「自分がどうしたいのか」「自分がどこに住みたいか」を考えることが大事だと思っている。

坂本:地域や社会の課題、人が困ってることもたくさんあるから、そこから入りがちで、真ん中が置き去りになってるケースが多いと思うんですよ。「なんでそれやってるの」って聞かれると、真面目な人ほど「いや、世の中のためでしょう」って言うんやけど、でもそれを享受する自分は一体どこにいるの?みたいな。
そうじゃなくて、「自分としてはこう生きていきたいし、暮らしたいし、自分はこっちのほうが幸せ・おもしろい・美しいと思うからこうあってほしい」っていう順番で、起点はやっぱり自分の欲求だと思うんですね。自分というものを分かる、自分というものと出会うことが、結局全部の出発点にある。青木くんはこれを「自己ニーズ」と呼んでいます。
まず自分が気づきやすくなることからしか始まらないんですよ。少なくとも東吉野村で今起こってるのはそういうことなんかなと思います。

自分の想いに敏感になり、それにフタをせず、素直に育てていくこと。その積み重ねであれば、エネルギーが枯れることはないと坂本さんは話す。

坂本:「自分が気持ちいい・おもしろい・きれいだと思うからやってる」を積み重ねていくと、結果としてそれが社会課題の解決の一助になることもある。でも、それが目的じゃないんですよ。
現代は「自己ニーズっぽい他者ニーズ」があふれています。そうではなくて、逆に「自己は最小単位の社会や」って思ったほうがいいんです。自分がいいっていうことは、イコール、社会がいいってことやから、自己を犠牲にする理由がないでしょう。ある意味、わがままにやっていい気がします。

坂本さんは、その「わがまま」を「利己が突き抜けて利他になる」とも表現している。利他とは、自分のことよりも他人の幸せや利益を大切にして行動することだ。

坂本:自分の「やりたい」を拡張しようと思ったとき、初めて人の力が必要になって「人は一体どういうことをおもしろがってんやろう」とか「一緒に行ってもらうにはどうしたらいいやろう」とか考えるんですよね。
そうすると、結果的に利他的に振る舞わざるを得なくなってくる。その人をおもしろがらせないとやってくれないんです。ちょっとずつ広がっていくと、結果的に利他的な動きに見えてくるけど、起点は利己なんですよ。そこは、すごく重要だと思っていて。

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青木真兵さん・海青子さん夫妻の運営する、人文系私設図書館ルチャ・リブロ。犬も猫もいる居心地良いスペース