アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

手のひらのデザイン 身近なモノのかたち、つくりかた、使いかたを考える。

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#40

バッフォーネ三種の神器
― 青野摩周

(2016.04.05公開)

大学時代に飲食のアルバイトをはじめて以来、飲食業に携わって40年近くになってしまった。私は、大学は理系だったので将来の仕事の選択肢に飲食業は無かったのだけれども、気がついたら飲食業にどっぷりと浸かっていた。20年前にバール「バッフォーネ」をオープンしてからは、本格的に料理に取り組んできている。
そもそも、なぜに飲食業の道に進んだのか? 料理好きの母に育てられ、裕福ではなかったけれど幼少時代に家の台所に食器洗浄機が存在していて、毎回、食器洗浄機が動くのを大きな丸い窓から覗いていたのが懐かしい。そしてガスオーブンが設置されていて毎年X’masにはローストチキンを母が作っていた。このガスオーブンからは日々、様々な料理、お菓子、パンが飛び出して来たものである。
そんな幼少の体験から食というものを頭と身体にすりこまれていたのだろうか?
この母と話していて意見が一致するのは、料理には良い道具が必ず必要だという事である。
料理教室をする際によく生徒さんにお話する事であるが、良い道具があれば料理の効率は遥かに向上し、難しそうなレシピも意外と簡単にそして楽しく料理出来てしまうのである。
そんな私が愛するバッフォーネの相棒達をご紹介しましょう。

キッチンエイド…バッフォーネで20年間働き続けている。なんとボディーの横にHeavyDutyと書かれている。「丈夫な、酷使に耐える。」という意味である。なんと頼もしい言葉……(笑)
ケーキの生地やメレンゲ作成、ピッツァ生地やパン生地等、様々な物を捏ねる作業をこなす。捏ねるパーツが三つあり別途オプションでミンチにするパーツ、パスタを作るパーツ……これらがあれば、数えきれない仕事を黙々とこなしてくれるのである。20年間故障無し。実に頼もしい。料理に携わる方はほとんどの方がでこれを使っていると思う。

フードプロセッサー…料理人にはRobotCoupMagimix(ロボクープマジミックス)派とCuisinart(クイジナート)派が居るけれど私はMagimix派。これもパーツが多彩でスライス、みじん切り、すりおろし、メレンゲ作成等々。形状を気にする切り物は包丁でないとダメだが形状を気にしない仕込みは相当便利である。

食器洗浄機……シンクいっぱいの洗い物をわずか1分程度で洗い上げてしまう。本体価格は40万前後するが年間ランニングコストを含めて洗い場のスタッフを専属で構える事を考えればスタッフ一人雇うより遥かに少ない費用で済むのである。バッフォーネを開店する際に開店費用が結構高くなり見積もり段階で食器洗浄機をやめたらかなり安くなるとアドヴァイスされたが導入して大正解であった。これまた20年間大きな故障無しで現役。

他にも面白い優れものの小物は沢山あるがまた機会があればご紹介するとしましょう。
結論として他の職業もそうであると思うけれども、仕事の効率と道具はその使う方の生き様まで左右してしまうと思う。そんな自分の相棒に囲まれてする仕事は楽しいものだ。

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青野摩周(あおの・ましゅう)
1960年生まれ。愛媛県松山市出身。高知大学理学部数学科卒。大学在学中より喫茶店のバイトを経て、高知市内イタリアンの老舗伊太利亭(現在閉店)2店舗で10年間店長歴任。1996年にBaffone(バッフォーネ)創業。開店当初は日本国中でも本格的なバールは珍しく、特に高知では初のオープンエアーな店であった。現在メニューのジェノベーゼは日本一美味しいと評判で全国からこれを食べに来店されるお客様も多い。2012年、高知市技能功労者として表彰される。