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アネモメトリ -風の手帖-

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#75

いかなごのくぎ煮
― 兵庫県神戸市

今年も春の訪れをつげる風物詩「いかなごのくぎ煮」のシーズンがやってきました。
「いかなごのくぎ煮」とは瀬戸内海で捕れるイカナゴの幼魚(全長3~5cm)を佃煮にしたもので、できあがりが折れた釘のように見えることからこのように呼ばれています。
イカナゴの幼魚はシンコと呼ばれ、瀬戸内海のシンコ漁は毎年2月下旬から3月上旬頃に解禁されます。この頃になると淡路島や姫路、神戸市中のスーパーや魚屋の店先に「いかなごのくぎ煮」が山と積み上げられ、佃煮の匂いが漂います。一般家庭では「くぎ煮」を作って親類・友人に配ることも恒例化していて、そのために日本郵便ではレターパックといかなご封入容器をセット販売しているほどです。
神戸市垂水区では、イカナゴ漁の解禁日になると垂水駅周辺の商店街には「のぼり」が立ち並び、駅周辺の広場では、いかなごソングのメロディーに包まれます。また「神戸・垂水いかなご祭」等の関連イベントも行われるほど盛り上がりをみせます。
「くぎ煮」の発祥の地は神戸市垂水区といわれていますが、諸説があります。もともと「くぎ煮」に近い「いかなごの醤油煮」は明石や神戸、淡路島の漁師町でつくられていました。そこにショウガやみりんを加えて「くぎ煮」に発展させたのが神戸市長田区あるいは神戸市垂水区の漁師達ではないかといわれています。
またその歴史も意外に浅く、文献に現れるのは昭和10年刊行の料理書『滋味風土記』あたりから。そして一般家庭で「くぎ煮」が作られる様になるのは神戸市漁業組合の女性部による普及活動(昭和62年)以来のことです。
肝心の食感はやや硬くて甘辛いもので、温かいご飯の上にのせておかずとして食べるのですが、酒の肴としても十分です。冷えて固くなった「くぎ煮」は電子レンジで温めると柔らかく食べやすくなります。
JR新神戸駅や新大阪駅、神戸空港や大阪国際空港などの土産物店でも販売されていますので、機会がありましたらぜひ味わってみてください。

(有田若彦)

たるみの海産物
http://www.city.kobe.lg.jp/ward/kuyakusho/tarumi/shoukai/gaiyou/kaisanbutsu/

くぎ煮検定
http://kugini.jp/kentei/index.html
IMG_1133

地元スーパーでの販売風景。

地元スーパーでの販売風景

垂水観光推進協議会発行『いかなごたるみニュース』より。

垂水観光推進協議会発行『いかなごたるみニュース』より