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アネモメトリ -風の手帖-

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#63

変わる尾道、変わらない尾道
― 広島県尾道市

JR尾道駅の建て替え工事が始まりました。2019年春に完成予定の駅舎2階には眺望デッキ、さらに宿泊施設が建設され、装いも新たに生まれ変わります。施工を進めるJR西日本は、岡山・尾道・広島を核とした広域周遊ルートの創出を進めており、尾道はその中核を担う街として期待されています。豪華寝台列車「瑞風(みずかぜ)」が尾道駅に停車する様は、その象徴的な風景です。
海に目を向けると、瀬戸内の景勝地を周遊する豪華客船「guntû (ガンツウ)」が浮かんでいます。その名の由来は尾道の方言でイシガニを意味しているそうです。1室当たり1泊40万円から100万円以上で、船内にはレストランやバー、大浴場やエステ、ジムなどがあります。また、水陸両用飛行機の離発着が可能な港ができ、日本に今まであまりなかった、スーパーリッチ層をターゲットとした観光が生まれています。このように特別な大人が滞在する様子を、この街に暮らす子どもたちはどのような思いで見つめるのでしょうか。
人通りの増えた尾道駅前から60円を払って渡船に乗り、向島に渡ると風の流れが少し変わります。この島の南側には海岸線が広がり、平日でも釣り糸を垂れる人がいる静かな島です。島内には向島洋らんセンターという公園があり、その広い芝生広場の一角に元フランス料理店のシェフである江頭さんのカレー屋「Pacu Pacu」があります。江頭さんはお店を切り盛りしながら、いつも何かを作っています。カレーの付け合せのらっきょうを剥いたり、鳥の餌場を作ったり。また、飼っているヒキガエルの寝床や虫かごまでもお手製です。そこへ子ども達がやって来て、作業を眺めたり話をしています。仕事の合間に立ち寄った大人や、サイクリングの途中にカレーを食べに来た観光客も加わり、江頭さんの周りにはいつも人の輪がめぐらされています。年齢も性別も、また服装も異なる人同士が気軽に集まるこのカレー店は、これからも尾道の風景であり続けることでしょう。teduka

尾道駅。

ガンツウ
江頭2