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アネモメトリ -風の手帖-

風信帖 各地の出来事から出版レビュー

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#44

愛すべきスキマがあるまち
― 東京都港区青山

都内でも有数のトレンド発信地、東京都港区青山。その中心に位置する表参道駅から徒歩2分。2年毎に姿を変えるビルとビルの間に挟まれた奇妙なスキマは、最先端でクリエイティブなデザインで覆われているにも関わらず、懐かしい雰囲気を醸し出す不思議な場所です。
Commune 2nd」と名付けられたその空間は、「街と店と人が日常を共有するたまり場=community place”を創る」という考え方のもと、2012年に「246 COMMON」としてオープンしたコミュニティ型商業空間で、期間限定の遊休地活用プロジェクトです。
830平方メートルの細長い敷地の入り口では、日本一お洒落であろうタバコ屋が出迎え、奥に入るとヴィーガンフード専門店やフライドポテトとジンジャーエール専門店などのこだわりの屋台が並んでいます。夜になると、様々な国籍の人々が巨大なエアドームに囲まれた共有スペースをビール片手に埋め尽くし、自由気ままに楽しむ様子が伺えます。ドームを抜けた突き当りにはシェアオフィスがそびえ立ち、ガラス張りの小さなスペースを横目に、クリエイティブな学びの場「自由大学」のゲートをくぐり抜けると、この不思議な空間は終わりを告げ、ファッショナブルな表参道の小路に辿り着くのです。
「食」「働き」「学び」をテーマに構成されたこのプロジェクトは今年3期目に突入し、ゴミの削減やグリーンエネルギーを活用したコンテンツの導入などの新たな試みによって、より社会的なメッセージを発信し始めています。とは言え、近隣に勤める会社員の私にとっては、美味しいお弁当を買うことが出来る貴重な場所であり、通う度に交わされる会話とオープンな空間によってつくられる居心地のよさは、まるで昔ながらの商店街のような温かみさえ感じます。
一流ブランドショップや個性的なセレクトショップ、こだわりのカフェなどの流行発信基地が建ち並ぶこのエリアに、突如現れたこのスキマ。東京の新たなカルチャーを発信しはじめたこのスキマを、ぜひ覗いてみてはいかがでしょう。

Commune 2nd
http://commune2nd.com/

(月田尚子)
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