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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#31
2016.07

「一点もの的手づくり」の今

後編:RYOTA MURAKAMI オカンとファッション
8)モードとオカンアートのあいだで展開する

オカンアートだけでなく、亮太さんがファッションを広く捉えるようになったきっかけがもうひとつある。それは千明さんの服の買い方だった。

——あるとき実家に帰ったら、たまたま母親が服を買ってて。おばあちゃん(千明さんの母親)の手づくり服を着せられてたひとですから、服を買ってるイメージがあんまりなかったんですよ。珍しいなと思って「その洋服どうしたの?」って聞いたら、通販カタログで、年間費4,000円くらい払えば、春夏秋冬に1回ずつ服が送られてくるというのに登録した、と。そのときは夏の服が届いたといって、ワンピースをすごく嬉しそうに自分に当ててるんですよね。どんな服がくるのかわからないんですよ。色も選べない。4,000円払って、年に4回服が届くだけというシステムに衝撃を受けました。
僕はファッションと付き合うといったら、雑誌を読みまくって服を見て、お店に行って試着して、でもちょっと違うなとか、そういうことだと思ってたんです。でも、それとは全然違う、どんなものかもわからない4着が届くのをすごく楽しみにしている母親を見て、自分の知っているファッションは狭い、本当に一部しか見ていないんだな、と。それぞれにファッションがあって、それぞれの楽しみ方があるわけで、こういうファッションもちゃんと認めてあげたいっていうか、このひとたちが大事にしているものも、もっと見ていかないといけないな、と思ったんです。

どんな服でも、買ったり着たりする場合には、そこに何がしかの選択があり、楽しみがあるはずだと亮太さんは思っている。

——いろんな考え方があると思うんです。でも、どんなひとでも服装をある程度は気にするし、ほめられればうれしいですよね。
うちの母親のように、お楽しみみたいに届くのが楽しいというひともいれば、単純に着るのが好きっていうひともいる。ものがいい、悪い以前に、楽しんでるひとがいるのが好きですね。その気持ちがファッションとして素敵やなって思うんで。
今後は、そういう気持ちを感じてもらえるようなものをつくっていきたいですね。これからはもっと、着る喜びじゃないですけど、そういうのを感じてもらえるようなものをつくっていきたいです。

いろんなファッションがあっていい。そのことに亮太さんのような若い世代が気づき、表現し始めている状況はとても現実的であり、これからが開かれていきそうな気もする。さらに、亮太さんの考えるファッションは、日本各地のオカンのものづくりとも関わっていく可能性もある。

——例えば神戸長田地区のオカンたちもそうですが、全国には、特に東北とかには独特のオカンアートがたくさんあるらしくて。そういうのを訪ねていきたいですね。現地に行ってお話を聞いて、ご当地ごとにものづくりができるかもしれないですし、ギャラリーで展示をしてもいいですし。そのときは、誰かを紹介してもらうとかじゃなくて適当に行って、口コミで見つけ出したい。
オカンたちって趣味だから、家の中にとどまってやってるひとが多いですよね。そのひとたちに社会と関わりを持たせたいなって思うんです。本当にやばいものとかをたまに見るんですが、この間四国に行ったときなんかは、出窓全面がニットでつくっただるまで埋まってるんですよ。ひとつひとつが大きくて、タテに積んであって、窓全部が埋まってて、すげえなあって思って。そういうひとたちと絡みたいですね。

千明さんに限らず、自由にものづくりを楽しむオカンたちと、何かをしていく。RYOTA MURAKAMIはモードとオカンのあいだを揺れ動きながら、新しく展開していくかもしれない。

アトリエの壁には、亮太さんがインスパイアされるものたちがピンナップされている。千明さん手づくりの小物からお菓子の包装紙、民族衣裳を着たポートレイトまでさまざまだ

アトリエの壁には、亮太さんがインスパイアされるものたちがピンナップされている。千明さん手づくりの小物からお菓子の包装紙、民族衣裳を着たポートレイトまでさまざまだ