アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#14
2014.02

ひらかれた、豊かな<場>をつくるために

前編 京都・Social Kitchen

4. S・Kをスタートする

新たに始める場をどんなものにするか。hanareのメンバーは話し合いを重ねた。
これまで以上に、“多様な背景を持つ人たちが集まり、会話し、議論し、学び、実践する”場としたい。そのためには、さまざまな“実験”や“遊び”が必要だ。それは、つまり「公民館」ではないか。ごく自然に、公民館という言葉は出てきた。

公民館を英訳するとSocial and cultural center。海外にはS・Kのようなスタイルの場所があちこちにあるんですが、日本にもあったらいいね、でも日本はやらないだろうな、というような話を前からしていたんです。だったら、自分たちがやってみようかと。公民館に21世紀をつけたのは、行政が関わるのではない、私設の公民館であるということを表したかった。自分たちがやりたいことをやりながら、空いているときは使いたいひとに使いたいように使ってもらえたらいい、と。(山崎さん)

考えてみれば、「喫茶はなれ」のころから、hanareの活動は公民館的であった。誰に対してもオープンで、どんな話題やテーマを投げかけてもよく、そこに優劣はない。そのスタンスはとても公共的であり、それをより明らかにする言葉が「公民館」だったということだろう。
S・Kのサイトには、「私設公民館」であることについて、以下のように記されている。

 私設公民館であるSocial Kitchenですが、社会教育法で謳われている「公民館」の目的にそって運営しています。加えて「国籍、年齢、職業、興味・関心、 セクシャリティー、宗教の異なる人たちが集い、それぞれの関心や生活に直結する事柄を表現するだけでなく、そこから見えてくる大きな問題に関しても、 家族や友人以外の他者がいる前で自由に意見を表現し、お互いに影響を与え合うことができる場所」、すなわち古典的な意味での公共空間であることを目指しています。

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hanareが手がけたイベントやプロジェクトのフライヤーや冊子とS・Kのフリーペーパー

 誰もが自由に使える場所として、公民館はある。しかしじっさいは、さまざまなひとが集うゆえに、政治的なことやマイナーなものごとは遠ざけられる、というふうになりがちだ。だからこそhanareのメンバーは、“表現の自由”が守られる公共的空間をつくり、その運営のしかたも行政に頼らず、新しい組織のありかたや働きかたをつくっていくことを目的とした。自分たちのめざす理想を実現する“実験”をここで始めたのである。
そしてもうひとつ、「公民館」とともに、キーワードとなるのは「台所」という言葉である。「喫茶はなれ」当初からの、食から始まるつながりを基本とする姿勢は変わらない。だから、ワークショップなどを「台所大学」と名づけるいっぽう、食べること、さらには農業から始まる食の循環までを、積極的に扱うことにしたのだった。
ではじっさい、S・Kではどんなことが行われていったのか。利用者に話を聞くことで、S・Kの多彩な使われかたを見ていきたい。

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S・Kの外観と1Fのようす。カフェメニューは黒板に書き出される。さまざまなフライヤーも置かれ、アット・ホームな雰囲気だ