アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#10
2013.10

しょうぶ学園 ― ものづくり、アート、創造性 ―

前編 好きなものをつくり、幸せでいること 鹿児島の障がい者施設から
8)ものづくりと創造性のあいだ

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ヌイ・プロジェクトは現代アートのようにコンセプトに基づくものというよりは、より純粋な「表現」に見える。
わたしたちがものをつくるときはなにか目的があるが、彼らにはそれがない。また、できたものへの執着もなく、作品をギャラリーに飾っても、見に来ようとはしない。

———彼らの関心は過去や未来ではなく、今にしかないんじゃないでしょうか。今を継続しているんです。よく「継続力がありますね」と言われるんですけれど、根気とも違う。今やってることを明日もする、明後日もする。今の連続をしているということだと思います(福森順子さん)。

ものづくりに悩んでいるひとや、学生などがヌイ・プロジェクトの作品を見ると、涙を流したりするそうだ。これだけストレートに、躊躇なくものをつくることに打たれるのだろう。しょうぶ学園でものづくりを見て、話を聞いていると、アートとは何なのか、ものづくりとは何なのか、クリエイティビティとは何なのか、改めて考えさせられるのである。(後編に続く)

しょうぶ学園
http://www.shobu.jp
10月12日まで、京都造形芸術大学・ギャラリーオーブにて「しょうぶ学園展【細胞の記憶】― 表現のかたち ―」を開催。
http://www.kyoto-art.ac.jp/events/196
10月8日まで、梅田ロフト 7Fロフトフォーラムにて展示「FREE POP EXPO」に参加。
http://www.loft.co.jp/shoplist/umeda

文:成実弘至
京都造形芸術大学准教授。
文化社会学。
著書に『20世紀ファッションの文化史』(河出書房新社)、編著書に『コスプレする社会』(せりか書房)、『空間監視社会』(新曜社)など、共著に『Japan Fashion Now』(Yale University Press)ほか。
展覧会『感じる服 考える服』(2011年、東京オペラシティギャラリー)にキュレーターとして参加。

写真:石川奈都子
建築、料理、プロダクト、人物などの撮影を様々な媒体で行う傍ら、作品発表も精力的に行う。撮影を担当した書籍に『而今禾の本』(マーブルブックス)『京都で見つける骨董小もの』(河出書房新社)『脇阪克二のデザイン』(PIEBOOKS)『Farmer’sKEIKO 農家の台所』(主婦と生活社)『日々是掃除』(講談社)など多数。