アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#64
2018.09

生活と表現が育まれる土壌

1 東京都世田谷区・生活工房の日常 

1)暮らしのデザインミュージアム

東京都世田谷区三軒茶屋。ほのぼのとしたイメージの浮かぶ地名の由来は、江戸時代に遡る。この頃、丹沢(神奈川県)にある大山阿夫利神社へ雨乞いに行く「大山詣り」というものが流行。最盛期は、年間数十万人もが足を運ぶほどで、その大山道の分岐点に、三軒の茶屋があったことから名付けられたという。辺りは旅の途中で荷物を降ろしてほっと一息をつく、宿場町だったそうだ。その面影を残すように、いまなお駅前は居酒屋や商店街などで活気に溢れているが、数分も歩くと閑静な住宅街が広がる、生活感のあるまちである。
渋谷から東急田園都市線に乗って5分。改札を出て右手の道を歩くと、すぐににんじん色の建物が目の前に現れる。このキャロットタワーは、スーパーやTSUTAYA、そして世田谷パブリックシアターが入っている、三軒茶屋の中心的な存在だ。エスカレーターを上って3階、ここに「生活工房」がある。

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生活工房のギャラリーの入り口。訪れた日は、折紙創作集団スクエアによる『折紙生活展—もしも折紙が日常に折り込まれたら!?』が開催されていた(2018年6月16日〜7月16日)

生活工房は、わたしたちの日常を見つめ直す「暮らしのデザインミュージアム」である。「生活者が漠然と抱く疑問を共有し、目に見える活動にしていく」ことを活動方針に1997年に開館し、今年21年目を迎える世田谷区の文化施設だ。
その特徴のひとつは、扱うテーマの幅広さにある。時間の多様性について考える『時間をめぐる、めぐる時間の展覧会』、電子レンジなど身近な家電製品をひたすら分解する『分解ワークショップ』、世界各地の暮らしや儀礼などの映像を見ながら、同じ技法で紐や粉をつくってみる『映像のフィールドワーク・ラボ』、手づくりアートののみの市『世田谷アートフリマ』……「衣食住」という基本的な活動に始まり、伝統工芸から先端技術、国内外の地域文化まで、あらゆる人類の営みを行き来する。
そして、これらに対して「展覧会」「セミナー / イベント」「ワークショップ」「地域と市民活動」という4つの方法でアプローチしている。特にギャラリーの横にある市民活動支援コーナーは充実していて、どの時間帯に行っても誰かが話し合ったり、熱心にものをつくっている。目だけではなく、手や足を使って、誰かと語らいながらものごとに向き合ってゆく方法は、わたしたちが何かに出会うとき、とても自然なかたちに思う。

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(上)ギャラリーでの展示は、企画ごとに老若男女さまざまな人が訪れ、関連ワークショップでは30〜40代を中心に、学生とお年寄り、サラリーマンとアーティストなど、ふだんなかなか出会わないような人々が肩を並べる / (中2点)市民活動支援コーナーでは、編み物や勉強会、打ち合わせなど、さまざまな活動が行われている。約100団体ほどが目的に応じてかわるがわるスペースを使っている。パソコンや大判プリンターなどの利用も可能 / (下)ワークショップルームにあるキッチンは20人以上が同時に調理でき、広くて大人気。この日は、古代米を使ったごはんをわいわいつくっていた。ほかにも、展示やトークイベントをひらくことができるスペースも貸し出している

(上)ギャラリーでの展示は、企画ごとに老若男女さまざまなひとが訪れ、関連ワークショップでは30、40代を中心に、学生とお年寄り、サラリーマンとアーティストなど、ふだんなかなか出会わないような人々が肩を並べる / (中2点)市民活動支援コーナーでは、編み物や勉強会、打ち合わせなど、さまざまな活動が行われている。約100団体ほどが目的に応じてかわるがわるスペースを使っている。パソコンや大判プリンターなどの利用も可能 / (下)ワークショップルームにあるキッチンは20人以上が同時に調理でき、広くて大人気。この日は、古代米を使ったごはんをわいわいつくっていた。ほかにも、展示やトークイベントをひらくことができるスペースも貸し出している