アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#6
2013.06

市と、ひとと、まちと。

前編 高知の日曜市
1)市のまち、高知

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(上から)早朝の5時から開く。出店者は8時までに必ず開店することになっている/

(上から)早朝の5時から開く。出店者は8時までに必ず開店することになっている / 高知名産のトマト。色も味も濃い / 鯖寿司も京都のものと違って豪快

旬の野菜やくだもの。屋台の食べ物に古着、雑貨……。街路や広場に軒を並べ、衣食住の品々を売り買いする「市」は、古くから日本各地にある。簡易なテントを立てて、出店者が持ち込んだものを並べるという、いたって素朴な流通システムだが、その土地の風土が映し出されているようで興味深い。

なかでも高知市では、その「市」がまちの名物となっている。日曜ごとの「日曜市」は300年以上続く風物で、終日開催の露天市としては日本一の規模といわれており、地元の人々はもちろん、全国各地から観光客も訪れる。

会場はまちの中心を東西に走る大通り・追手筋。全長1.3kmの片側車線を封鎖して、朝5時には設営が始まり、7時頃には約430店ほどのテントが立ち並ぶ。早朝から夕方まで、いつ訪れても活気に溢れ、ひとでいっぱいだ。新鮮な農産物や食べものは色とりどりで、売り手のおばちゃんたちの土佐弁があちこちから聞こえてくる。賑わいながらもどこかのんきで、土佐のおおらかな空気がぎゅっとつまっているような空間なのだ。

また、高知の市は「日曜市」だけではない。火曜、水曜、木曜、金曜、そして土曜と、ほぼ毎日のように市内各所で露天の市が立つ。日曜市に比べると、規模はずいぶん小さくローカルだが、近隣の住民の暮らしになじみ、溶け込んでいる。スーパーやコンビニで生鮮食品を買うのも当たり前という時代、高知ではわざわざ露天の市に出向いて購入することがわりとふつうなのである。
市での買い物は、少しばかり手がかかる。品を確かめ、ほしいものを見きわめる。コンビニでさっと購入するようなわけにはいかない。しかし、おまけや値引きをしてもらえたり、時には思わぬ情報を交換できたりもする。そんなやりとりを楽しむ土壌が高知にはたしかにある。

昔何も食べるものがないときにこの「イタドリ」をよく食べたき、と言いながらたくさん買っていかれた

昔何も食べるものがないときにこの「イタドリ」をよく食べたき、と言いながらたくさん買っていかれた