アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#5
2013.05

新潟 「エフスタイル」がつむぐ、あたたかな「循環」

後編 作り手、売り手、そして伝え手

8.「本当に要るもの」を売りたい、伝えたい
〜 京都・kit(2)

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店内の一角に大きく設けられたエフスタイルコーナー

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エフスタイルの麻のバスマットが入荷していた。穂積繊維工業製の、水はけのよいすぐれた逸品

kitでは、エフスタイルの商品は、店の一角にコーナーを作って展開している。椹木さんが、お客さんに商品を説明する際、思わず力が入るエフスタイルの商品を聞いてみた。

「どの商品も好きですが、特に亀田縞シリーズはよく考えてあるな、と感心しますね。一見地味なんですが、誰かが持っていると、『あ、いいな』と思わされるのは、あずま袋。サイズ感が絶妙で、旅行の時にたたんで持っていけて便利ですし、和でも洋でも何でも合う。大判の風呂敷は肩掛けとして羽織っていって、海に行った時にみんなで朝食を食べるのにそのまま下に敷いたり。今、私が着ている割烹着もおすすめです」

京都生まれ・京都育ちの椹木さんの目には、新潟の寒さや農作業に耐える亀田縞の丈夫さや無駄のなさも、美しいものとして映るようだ。

「亀田縞は野良着の生地ですからね。必要から生まれたものというのは機能的できれい。またそれで割烹着を作るというのが、いいですよね。しかも、着たくなる割烹着。亀田縞の本来の用途を生かしながら、でも、いわゆる割烹着という感じではなく、服みたいに着られるのが、うまいなあと思います」

エフスタイルが1年かけて開発した布「ステインプルーフ」の新作シリーズも椹木さんのおすすめ。ポリエステルでありながら帆布のようなハリと質感を持つステインプルーフで仕立てたパソコンケースとスリッパが、特にお気に入りだ。

「このカーキ色、絶妙にいいですよね。ナチュラルなものではないけれど、こういう製品、私は大好きです。天然素材なら何でもいいという刷り込みはあまり好きではありません。天然素材にも、工業製品にも、それぞれのよさがある。エフスタイルの、そういう“かたよらなさ”が好きですね。きっとサンプルの時点ですごく苦しんでいるだろうから、新作がどんどん出るわけではないんですけど、毎回驚かされます」

エフスタイルと椹木さんに共通して感じるのは、「お客さんの前に出すまでに、徹底的に時間をかけている」こと。しかもその時間は、「売れるかどうか」の審査ではなく、「本当に要るものかどうか」という自問自答にたっぷりと注がれている。

「エフスタイルの商品って、なんでこんなもん作ったんやろ? というものがひとつもないんです。どれも要るものばかり。当たり前ですが、みんな要るものだけがほしいと思ってる。同じ店で同じものを売り続けていくのって本当に苦しいことなんですが、でもあえてそうしていかなくちゃいけないと思っています。苦しいけれど、それに負けて、手当たり次第にいろいろな商品を仕入れてゴミにするよりは気が楽です。無理せず、飛びつかず、自分が要ると納得したものを、自分でお客さんに直に伝えて完結させる。それが大事だと思います」