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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#5
2013.05

新潟 「エフスタイル」がつむぐ、あたたかな「循環」

後編 作り手、売り手、そして伝え手

7.エフスタイルとの「ちょっと緊張する関係」
〜 京都・kit(1)

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kitの店主、椹木知佳子さん。話題の作家を招いてのワークショップや展示販売会なども精力的に企画する

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韓国のイブル(布団)やラオスの縄など、海外で買い付けた日用品も多い

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kit店内。入荷する商品に合わせてディスプレイが変わり、行くたび新鮮な風が吹いている

エフスタイルが大事にするのは、作り手との関係だけではない。「製品を消費者に伝える」という、いわば「製品の仕上げ」の部分を担う売り手との関係も、エフスタイルは大切に育くんできた。エフスタイルとつながりの深い作り手3社を訪ねた後、その製品がどのような思いで消費者に伝えられ、届けられているのかが知りたくなり、最後に、京都にある売り手の店を訪ねてみた。

京都市上京区にある「kit(キット)」は、2012年にオープンした生活雑貨の店だ。海外で買い付けた生活道具、焼菓子や乾物・茶葉などの食品、国内の作家の器、メーカーの衣料品など、暮らしに役立つ日用品としての本分を忘れていない、用の美にあふれた品物が並んでいる。京都では唯一、エフスタイルの商品を扱っている店だ。

店主の椹木知佳子さんは、以前、一乗寺にある書店「恵文社」併設の生活雑貨フロア「生活館」の商品セレクトを担当していた。その椹木さんがエフスタイルの2人と知り合ったのは、ちょうど生活館がスタートした頃。もともとエフスタイルの靴下を買う機会があるなど、存在は知っていたが、ひょんなことから縁がつながり、エフスタイルの商品を生活館で扱うことになった。しかし、しばらくして、取引はいったん終了してしまう。

「生活館を立ち上げたばかりだったこともあり、スタッフの采配にも不慣れな中、エフスタイルの商品の生産背景をお客さんにきちんと説明しながら売る、という環境をうまく整えることができなかったんです。同じものでも、どう売るかによって全然違う。私もやりながらでしか気づくことができないタイプなので、そう気づいたのはだいぶ後になってからでした。ものに力があっても、置いてあるだけでは気づいてもらえないんです。伝える意志がないと」

そして、時が過ぎること7、8年。椹木さんは独立し、自分の店を持った。独立を決めるにあたっては、エフスタイルの存在にも少なからず後押しされた。

「生活館では不完全燃焼のまま終わってしまいましたが、その後、エフスタイルも徐々に商品が増えてきて、やっぱり扱いたいものが多いな、もう一度売らせてもらえないかなと気になり続けていました。私も、そう広くない自分の店に、何を置くのか、なぜ置くのか、自分に説明のつくものしか置きたくないと思っていましたし。そうしたら、また奇遇にも共通の知人を介して縁がつながり、商品を置かせてもらえることになったんです」

今度は、エフスタイルを訪ねて新潟まで幾度も出向き、どんな店でどんな風に売っていきたいかをしっかり話し合った。

「彼女たちも、自分たちの商品を置いてもらえるなら誰でもよいという感じではなかったですし、商品を説明してほしい、それができる店を選びたいという姿勢をしっかりと持っていたので、緊張しましたね。今も仲良くさせてはもらっていますが、実は、緊張感は常にあるんです。でも、それがいい。どちらかが頭を下げてやるのではなく、対等な立場で、お互いが気持ちよくなる方法でものを売っていきたいんです。何より自分が尊敬している取引先の商品は、紹介しやすい。説明にもおのずと説得力が出ますしね」

売れるもの、売れそうなものをどんどん引っ張ってきて、新しい取引先と関係を結んでは離れていく。そういうやり方はもうしんどい、と椹木さん。

「人付き合いと同じです。尊敬できる人と仕事がしたいし、信頼できる取引先と長く付き合っていきたい。それがひいては、お客さんに喜んでもらうことにつながると思うから」