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アネモメトリ -風の手帖-

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#59
2018.04

場をつくる × クラウドファンディング

京都・出町座 前編
4)やりたくなかった? クラウドファンディング

場所も建物も決まった。ビジョンを共有する共同事業者も集まった。そして、いよいよ資金調達のためにクラウドファンディングを採用したと思いきや……

——僕はクラウドファンディングをやりたいと思っていた。でも、資金調達だけのためにクラウドファンディングをあてにしていたわけじゃないです。田中さんの会社は事業としての採算ベースを考えていたし、僕も開業資金が出せないわけじゃなかった。クラウドファンディングにはざっくり2つの役割があると思っていて、1つは純粋な資金調達。もう1つは広報。僕の場合は、両方欲しかった。個人の貯金を取り崩せば資金はできるけれど、4人の共同運営なので1人だけ個人資金を出すとバランスが崩れる。中立なお金が手元にあるといいなと思ったんです。でも、より大きい期待をしていたのは広報の方。出版業界はとかくITには弱いので、そこを逆手に取って情報の拡散がどのように起こるのかに関心があった。(宮迫)

——僕は、クラウドファンディングはやりたくなかった。もうやりたくないです。(田中)

田中さんの強い口調に少し驚いた。クラウドファンディングによって目標金額以上の資金調達を成功させたにも関わらず、田中さんはなぜ厳しい口調になるのだろうか。プレオープニング・パーティーでは多くの資金提供者が集い、開業を喜び合っていたのに。メディアでは資金を集めるノウハウばかりが語られるが、クラウドファンディングの本当の難しさは別のところにあるのかもしれない。そして、田中さんたちがクラウドファンディングに踏み切った要因はなんだったのか。次号はクラウドファンディングを軸に、出町座がわたしたちに提示した「価値」について語っていただく。

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プレオープンのさいは、多くのお客さんが料理片手に、和やかに談笑していた。田中さんが代表してあいさつを / 「出町座のソコ」は10時から22時ごろまで営業。コの字型のカウンター席で、映画の前後や本を片手に食事やお酒を楽しめる

出町座
https://demachiza.com

取材・文:山下里加(やました・りか)
京都造形芸術大学アートプロデュース学科教授。アートジャーナリスト。大阪アーツカウンシル専門委員(2013年6月〜2018年3月)、高槻市・豊中市・奈良市などの文化振興会議委員など地方自治体における文化政策に関わる。『地域創造』(一般財団法人地域創造)にてアートとまちづくりの関係を取材・執筆。『ブリコラージュ・アート・ナウ 日常の冒険者たち』(国立民族学博物館、2005年)、『山下さんちのアーカイブを持って帰る』展(ARTZONE、2014年)などの展覧会企画に参加。

写真:成田 舞(なりた・まい)
1984年生まれ、京都市在住。写真家、1児の母。暮らしの中で起こるできごとをもとに、現代の民話が編まれたらどうなるのかをテーマに写真と文章を組み合わせた展示や朗読、スライドショーなどを発表。2009年 littlemoreBCCKS写真集公募展にて大賞・審査員賞受賞(川内倫子氏選)2011年写真集「ヨウルのラップ」(リトルモア)を出版。

編集:村松美賀子(むらまつ・みかこ)
編集者、ライター。京都造形芸術大学教員。近刊に『標本の本-京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)や限定部数のアートブック『book ladder』。主な著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノニマ・スタジオ)など。