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アネモメトリ -風の手帖-

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#52
2017.09

横道と観察

後編 細馬宏通 × ほしよりこ 対談 

当代きっての「観察者」、ホソマさんこと細馬宏通さん。絵はがきから映画、アニメーション、マンガに至るまで、幅広いジャンルで、しなやかな視点から新しい「発見」を重ねてきた。ホソマさんの詳しいことは、前編をご一読ください。
今号では実践編として、ホソマさんの目と耳が、マンガ家・ほしよりこさんの作品に向けられる。ほしさんは2003年、ねこの家政婦「猫村さん」を主人公とする『きょうの猫村さん』をネットで連載開始。大きな話題となり、単行本『きょうの猫村さん1』(マガジンハウス)として発売されるやいなや、国民的な人気マンガに。その後、作品を出すたびにファンが増え、高く評価されてきたが、2014年に刊行された『逢沢りく』(文藝春秋)は傑作として各方面で絶賛される。2015年には、第19回手塚治虫文化賞のマンガ大賞を受賞した。他にはない、ユニークな表現のひとだ。
ホソマさんとほしさんは、旧知の仲。かねてより「ほしさんと話がしたい、ほしさんのマンガについて書きたい」と願っていたホソマさんに、今回は『逢沢りく』を中心に、ほしさんと存分に語り合ってもらった。
『逢沢りく』は、誇り高く孤独な14歳の少女の物語。東京に住む、何不自由ないはずのお嬢さんが、まったく付き合いのなかった大阪の親戚に預けられることになり、いやいや関西に向かう……。シンプルな話なのに、読み始めるとあっというまに引き込まれ、感情がさまざまに揺さぶられてしまう。
ホソマさんは『逢沢りく』をはじめ、ほしさんの作品を丹念に読み込んでやってきた。誰しも心を動かされずにはおれない名作の「しくみ」は、どうなっているのか。一本の線に、たった一言に……。ささいなことを仔細に観察しながら、絵の描き方からキャラクター、ストーリーに至るまで、あちらこちらと横道にそれつつ、ていねいに話を聞いていく。緻密なフィールドワークを重ねる「探偵」ホソマさんは、何を見つけてくるのだろうか。まずは、前編の最後に話題にのぼった「まつげ」のことから。

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(上)『逢沢りく』上/下(文藝春秋)。文春文庫版もある(下)『きょうの猫村さん』(マガジンハウス)は現在9巻が最新刊。ホソマさんは他に『僕とポーク』『B&D』(ともにマガジンハウス)も読み込んで対談にやってきた

(上)『逢沢りく』上/下(文藝春秋)。文春文庫版もある(下)『きょうの猫村さん』(マガジンハウス)は現在9巻が最新刊。ホソマさんは他に『僕とポーク』『B&D』(ともにマガジンハウス)なども読み込んで対談にやってきた

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細馬宏通(ほそま・ひろみち)
1960年生まれ。現在、滋賀県立大学人間文化学部教授。日常生活の中の身体動作を研究している。また、絵はがき、パノラマ、塔などのメディア史、ポピュラー音楽史にも関心を寄せている。著書に『介護するからだ』(医学書院)、『絵はがきの時代』『浅草十二階』(青土社)、『絵はがきのなかの彦根』(サンライズ出版)、『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか アニメーションの表現史』(新潮社)、『今日の「あまちゃん」から』(河出書房新社)、『うたのしくみ』(ぴあ)など。近刊に『二つの「この世界の片隅に」』(青土社)。バンド「かえる目」では作詞作曲とボーカルを担当。

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1974年生まれ。関西在住。ネットで始めた『きょうの猫村さん』が2005年に書籍化されて大ベストセラーに。15年『逢沢りく』(文藝春秋)で第19回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。著書に『山とそば』(新潮社)、『僕とポーク』(マガジンハウス文庫)、『B&D』(マガジンハウス)などがある。

対談は京都のイノダコーヒ本店にて。コーヒーフロートは「レモンがのってて、グラスの高さがちょうどいいところとかもいいんです」(ほしさん)

対談は京都のイノダコーヒ本店にて。コーヒーフロートは「アイスが上にぽとんと乗るんじゃなくて、グラスのなかに収まってるのが好きなんですよ。すごく品がいいんです」(ほしさん)