アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#46
2017.03

しくみをつくり、まちを動かす

柳原照弘さんと有田・2016/ project 新たな展開
6)振り返りつつ、これからを始める 4
百田陶園、2016 株式会社代表取締役 百田憲由さん( 2 )

ここのところ、百田さんは日本各地で、1616/ arita japanと2016/ について講演する機会も多い。有田焼再生の一歩を踏み出した立場から、日本のものづくりをどのように考えているのだろう。

———日本の各地でものづくりとか地方創生をやってますが、助成金だけで済ませて、リスクを負ってまでやることがないですよね。継続して地方の力にしていくには、(地方の行政などが)せっかくそこまで支えてくださったことを現実にどうするかを考えないと。そこがもったいないと言われるんじゃないでしょうか。人間、結果を残すことが大事だと思います。「えっ」ということをして結果が出て、まわりのひとを変えられるパワーが生まれてくるわけですよ。結果がないのにまわりはついてこないじゃないですか。いいことやってて、もう一歩突っ込めば結果は出せたのに、助成金ないからやめよう、安全に行こうと思って、いいものがつぶれてしまう例って、日本中いっぱいあると思いますよ。

百田さんは、家も店も担保に入れ、銀行に限度額いっぱいの大借金をした。そして、信じると決めた柳原さんのすることに一切口を出さず、画期的なものづくりを現実にしたのである。そんな百田さんだからこそ、言葉に説得力がある。ここぞというときを見きわめて、思い切って攻める勇気と覚悟、そして大胆な戦略。そこから道は始まるのだと思う。
2016/ を動かしながら、百田さんは有田のまちの再生も進めようとしている。

———有田には人間国宝はおられますけど、アーティストはいないんです。だからこの先、若いアーティストが有田から出てこないかと楽しみにしているところはありますね。有田のひとじゃなくてもいいから、有田に根づくアーティストがこの地場から出てもいいじゃないですか。
逆にその環境を有田がつくらないといけないから、それも含めてやることがいっぱいあります。アーティストインレジデンスとかもそうだし、世界基準のいい空間をつくって、泊まることやレストランも含めて。料理も含めて提案できる場所があれば違うと思うんですよ。そこまで土壌をしっかりつくればだいぶ変わるかなと思ってます。

以前の特集でも紹介したように、有田はものづくりに特化してきたまちで、魅力的なまち並みを観光に結びつけるようなことはなかったし、食べたり遊んだり、泊まったりするところもあまりない。百田さんは有田焼を再生するとともに、まちに文化が集まり、新たな文化が生まれていくことを考えているのだった。
「世界基準の空間」という考え方は、2つのブランドを通して、すでに百田さんのなかに、しっかりと根づいているのだろう。

———近くのまちを巻き込みながら、いろいろ考えています。やっとここまで来れたから、次のステップにつながるわけで。いい感じで進んでいると思います。だから来年の夏ごろ乞うご期待で。また変わります。
今は、5年先までにここまでやらなきゃっていう目標は立ててますよ。今の時代ね、10年先まではわからないです。1616/ arita japan も5年たって次のプランに入っていますから、5年間はその目標に向かって、5年経ったらもう一度考え直して、次のステップにいけるといいなと思います。

こまめに振り返りながら、前へ。その繰り返しで、有田はかつての活気を取り戻すだけでなく、これまでにない魅力を放つまちになっていくのかもしれない。
ちなみに、国際的な展開に関しては、2016/ projectで提携したオランダとの交流はさらに広がってきている。ものづくりにとどまらず、東京オリンピッックの際に、佐賀がオランダのホストタウンになったり、オランダのジャズシンガーが佐賀にくるなど、有田焼から始まって、かつて友好関係にあった国とまちは、ふたたび関係を深めているのだった。

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