アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#44
2016.10

本、言葉、アーカイヴ

前編 これからを「本」でひらく 宮城・仙台、石巻

『アネモメトリ』では、2012年12月の創刊にあたって、東北の本の文化を取り上げた。もともと、本や雑誌の文化に厚みがある土地において、本を通してつながり、広がっていくひととまちのありようを、仙台と盛岡で取材したのである。
そのときは、さまざまなひとがゆるやかに手をたずさえて、本を介して東北を発信しようとするうねりのようなエネルギーに圧倒されるばかりだった。それぞれの土地で暮らす人々にとっても、まだ遠く向こう側にある日常を取り戻す手だてとして、本や本のイベントなどは広く受け入れられやすかったのだと思う。

今年で震災から5年が経った。数字的にはひとつの区切りなのだろうが、東北の方々にとっては、さまざまに未だ現在進行形である。むしろ、非日常が終わり、日常が戻ってきたように見えるからこそ、震災前のこと、起こってからのことをいかに受けとめ、残し、伝えていくかに向き合っているのではないだろうか。
じっさい、本とその周辺に限ってみても、東北の各地で人々に変化が生まれてきている。震災後、わずか数ヵ月でイベントを行う決断をして、仙台のまちとひとを勇気づけてきたBook! Book! Sendaiがこれまでと異なる展開を模索しているし、被害の大きかった沿岸部などでは、小さな動きがいくつも立ち上がりつつある。
東北各地で、本はどのようにとらえられ、どんなつながりをもたらしているのだろうか。仙台及び石巻を中心に、今起こっていることを見ていきたい。

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(上から)仙台市の郊外、荒浜。根こそぎ流されてしまった土地で、復興の意思を表す黄色い旗が掲げられていた / 「book cafe火星の庭」と店主の前野久美子さん / 「マイクロライブラリー」のあるシェア型施設 「THE6」/ 石巻の日和山公園からの眺め。震災後、沿岸は居住禁止エリアとなった / 石巻「まちの本棚」に灯る明かり