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#255

新年度の手帳が発売されない。
― 野村朋弘

新年度の手帳が発売されない。

(2018.02.18公開)

皆さんはどのようにしてスケジュールを管理されているだろうか。
Googleカレンダーやサイボウズなど、webで管理できるものも多くあるが、手書きで自分のスケジュールを管理する手帳は、いまもって愛用者が多いのではないだろうか。
年末や年度末に文房具売場をみると、新たな手帳が所狭しと並べられている。
キャラクターものはさておき、スケジュールの記載も様々である。一月スタートのものや、四月スタートのもの、更には週ごとか月ごとか、はたまた週の初めが日曜か月曜かなど、デザインは多岐にわたる。
自分のライフスタイルや指向にあった手帳を探すのは、手間がかかるとはいえ、愉しい作業ともいえる。
私はMOLESKINEのマンスリーダイヤリーを愛用している。MOLESKINEは、イタリアのMOLESKINE社が販売している手帳である。ゴッホやピカソも愛用していたことで知られ、世界で販売されている。愛用するユーザーも多い。
このMOLESKINEの手帳の中でも従来のマンスリーダイヤリーはソフトカバーで、一年間使い続けると角が破損していく時もあるので製本テープで補強しつつ使用していた。そんな中、2016年からハードカバーの日本語版4月はじまりのものが発売された。大学の業務を把握する上でも、持ち歩くことを考えても便利で、2016年度、2017年度と相棒として活躍している。
しかし、2018年度版の日本語版4月はじまりのマンスリーダイヤリーは未だ発売されていない(公式サイトにも発売予定の情報はない)。もし発売されなければ、遡って1月はじまりのものを使うか、悩ましい日々が続いている。
たかが手帳、といってしまえばそれまでだが、仕事のツールは使い勝手やデザイン性など吟味して使いたいのが人情である。はたして日本語版を出してくれるのか、否か。

ここで少し視点を変えて、何故4月はじまりが、必ずしも発売されないのか考えてみよう。実は世界的にみると年度始まりを4月に設定しているのは珍しいのだ。
日本における4月にはじまり3月に終える年度制度は、官公庁の会計年度と、学校の学校暦がある。ではこの他、1年のサイクルはないのかといえば、7月はじまりの麦や酒造、9月はじまりの芋、10月はじまりの砂糖や大豆などがある。基本的には農業、もしくは製造に関わるものだ。
4月はじまりの会計年度は、明治19年(1886)に財政法が定められ導入される。これは当時のイギリスの会計年度が4月はじまりだったことを模したともいわれている。
明治期の学校はどうだったかというと、初期は江戸時代の寺子屋と同様に、特に入学や進級の時期が特に定められていなかった。個別の学習状況などに沿っていた。それが大学は海外に倣い、9月から一斉入学・一斉進級することが定められた。しかし、上記の明治19年に会計年度が導入され、国や自治体から助成を受けていた学校は、会計年度に合わせていくようになり、明治末には4月入学・進級が一般化した。こうして4月は入学・進学、また新卒一括採用のシーズンであるとともに桜の開花時期でもあるので、新シーズン=桜咲く4月と定着していったのだ。

しかし、海外に目を向けてみると、アメリカやイギリス、フランス、イタリアといった欧米諸国や中国なども9月入学がスタンダードである。
また会計年度に目をむけば、1月はじまりのフランスやドイツ、10月はじまりのアメリカなど、国によって様々である。
かくして、年度が4月にはじまり、特に会計年度や学校暦が同一なのは日本だけ、ということなのだ。こう述べていくと、イタリアに本社のあるMOLESKINE社の手帳が1月はじまりをスタンダードとして製造するのも頷ける。
それでも私はあくまでもMOLESKINEの4月はじまりのマンスリーダイヤリーが欲しい。発売されるか否か、やきもきする日々は続く。

p.s.このコラムを脱稿したあと、Amazonで4月はじまりのマンスリーダイアリーが発売されることを知った。嬉しい。とはいえ、毎年こうした心配がなく、発売されることを切に願う。