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#245

古書店でのブラウジング
― 野村朋弘

古書店でのブラウジング

(2017.12.10公開)

私は研究にせよ、小説などの読書にせよ、書籍は購入して読む。
持っていない、若しくは入手出来ないために図書館に通って読むこともあるが、使う物であれば可能な限り買う。なにも蒐集したいという思いがある訳ではなく、本に直接書き込みをしながら読む癖があることと、学識や情報をインプットするためには筆者や校訂者に敬意を払いたい。また借り物であると、ついついまた今度ということになるが、身銭を切ることで真摯に本に向き合いたいという思いがあるからだ。
これは師匠の一人の教えでもある。

そのため、新刊を扱う書店はもちろんのこと、古書店に学部生の頃から通い、自宅や職場の机周りはひたすらに書籍が増殖していく。
図書館はもちろんのこと、新刊の書店や古書店などで書籍に触れる、読むことの最大の利点はブラウジングが出来ることだ。
ブラウジングとは、webの用語で、webサイトを閲覧する、目を通すという意味である。
本のブラウジングとは本棚を眺めて、気になった本を手に取り読むことを指す。

目的の本を求めてAmazonで検索する場合もある。書籍を直接的に検索する場合、求めている情報にダイレクトにアクセスすることが可能となる。
しかし、知識のインプットとは、機能性が求められるだけではない。曖昧であったり、漠然としている興味関心に随って、本のタイトルや著者、また関連するものを手に取り、目次を眺めていくことも、また知識の集積や新たな発見には大切なことである。
図書館の開架図書や書庫は、ブラウジングをするのに最適ではあるものの、昨今の学習環境の整備から全自動の閉架書庫が大学でも整備されつつある。直ちに目的の書籍へアクセスすることは可能だが、ブラウジングによる知見の修得という点では残念ながら劣ってしまう。一長一短があるということだろう。

さて、図書館や大型の新刊書店では豊富な情報に溢れているが、古書店は主の目利きによって古書が仕入れられている。ある種、セレクトされた情報が列べられているのが古書店である。私はそうしたセレクトされた古書を眺めるのが純粋に好きだ。他者の視点を知ることにもつながる。
新たな街を訪れた際、電車やバスではなく、歩くようにしている。それは地形や街並みを知るためでもあるが、古書店を探して入り、地域の本などをブラウジングして発見するためでもある。
自身の研究テーマとはまったく関係しないジャンルのセレクトをブラウジングするときにも思わぬ発見がある。これはAmazonなどでは得られない効能といえよう。

おりしも先日、同僚とこれまた元同僚の藤村克裕先生が開かれた古本屋を訪れた。藤村先生のセレクトで列べられている本棚は、私がこれまで手に取ることがなかった本に溢れていた。ついつい長居をして、何冊かを落手してしまった。
こうした書籍は、新たな知識・知見として発想力の栄養分となる。そう自分を説得して、財布は軽く、鞄は重たくなりつつ、キャンパスへと向かったのであった。

なお、藤村先生の書店の情報は以下の通りである。
興味関心をもたれた方は、ぜひ、脚を運んでみて欲しい。

店名:おふね舎
住所:東京都新宿区富久町1-5(最寄りの駅は都営新宿線の曙橋駅)
営業日:毎週日曜・月曜
営業時間:13:00~19:00
ネット販売無し、出張販売無し。